法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

山形浩生氏が統計の捏造の困難性だけをもって経済指標の信頼性を絶対視していたことのメモ

発端は、なぜ全幅の信頼をおけるのかとリフレ派への疑問をつぶやいた柳下毅一郎氏のツイートだった。それを山形氏が全否定するように反応した。

アベノミクスで経済がよくなってるとおっしゃるリフレ派の方々は、なぜ財務省の出す経済指標は捏造されてないと信じられるのだろうか。

呆れたよ、柳下。どの統計が捏造だと思ってるか知らないが、統計は多くの場合類似のものが複数あって、しかも相関するはずのものも多く、一部を操作したらつじつまあわなくなることが多いからだよ。自分の実感だの目の届く範囲がいかに小さくあてにならないかも忘れた、夜郎自大な全能感に陥るとはね。

困難性をもって捏造されていないことの根拠になるのであれば、たぶん日本の公文書が改竄されることもなかったろう。


その後、統計が疑わしいという報道と関連づけるツイートに対して、異論が出るのも当然だという反論をおこなっていた。

内閣府の統計の信憑性についてのニュースに関連して、山形浩生氏がいじることはありえないと断言していたのを思い出してクリップ。

統計は、小学生のお天気日記とはちがうので、多様なデータの集計方法に様々なやり方があるのです。当然異論も出ます。いろんな人や機関がデータを見て、そのあり方をこのように検討しているということ自体、統計をそうそう勝手に捏造するのはむずかしいという証拠でもあるんですよ。

しかし異論が出るのが当然であれば、もともとの柳下氏の疑問の裏づけにならないだろうか。


そして先日から、厚生労働省が不適切な調査をおこなっていたことが明らかになったと報道されている。
「国際的に日本の統計に信頼が損なわれるおそれ」雇用保険や労災保険で過少支給も | 注目の発言集 | NHK政治マガジン

雇用問題に詳しい嶋崎量弁護士は「国の統計調査が本来と異なる手法で行われていたことは極めて重大な問題だ。国の発表データは雇用保険の失業給付や労災保険にも影響し、景気判断の指標などにも使われる。また、民間でも春闘で労使が賃金を決める際、参考データとして使われていて、国際的に日本の国の統計に対して信頼が損なわれるおそれがある。あってはならないことなので原因を究明し、再発防止に取り組んでほしい」と話しています。

このような不適切な処理が組織的におこなわれていたという報道もある。
雇用保険、数十億円超を過少給付 勤労統計問題の影響で - 共同通信 | This Kiji

また厚労省の担当者が2004年に本来とは異なる調査手法に変更した後、担当者間で15年間引き継がれてきた可能性があることも判明した。調査手法を正しく装うため、データ改変ソフトも作成しており、厚労省の組織的な関与の有無も焦点の一つだ。

なるほど、捏造が困難であるということは、その捏造は大規模におこなわれ広く責が問われるものだろう。そしてその悪影響の範囲もささいなものではなくなる。
そういう意味では、統計捏造の困難性を主張した山形浩生氏の見解が正しければ正しいほど状況はひどいのだ、と覚悟しておく必要がありそうだ。