法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世にも奇妙な物語'18秋の特別編』

奇妙な味の短編ドラマを見せる、土曜プレミアム枠で恒例のオムニバスドラマ。今回は30分枠の短編5作。
世にも奇妙な物語 - フジテレビ


「脱出不可」は、青年が謎の一室に閉じこめられて、錠をあけるためクイズを解かされる。協力を求めるのはインターネットの無責任な野次馬。
いかにもなYOUTUBEやニコ生やツイッターの風刺を、デスゲームとして展開。主人公たち閉じこめられた人々も無責任な野次馬のひとりという真相も、予想通りではある。
クイズをとおして主人公に罪を自覚させていく物語として成立しているし、復讐という動機がデスゲーム物にしては説得力をもたらせいているが、現実味や意外性は薄い。
動機が明らかになった以上の驚きがオチにないのもイマイチ。


「あしたのあたし」は、夫との日常に飽きた女性が、WEB配信される次回予告として自分の未来を知り、変化していく。
いかにも一昔前のドラマパロディのような不倫ドラマが、あまりにもテンプレートすぎて共感も反発もしにくい。次回予告のキス描写が煽っているだけで本編では違う内容だったと考える局面は良かったから、予告だけでは予想できない展開でもっと主人公を引きずりまわしてほしかった。
ただオチは嫌いではない。それなりに伏線がはられていて納得できる一段目と、一気にジャンルを変更する二段目で、コントラストが印象に残る。


「幽霊社員」は、社史編纂室に追いやられている中年が、プロジェクトを進めながら若死にした社員の幽霊に協力をたのみこまれる。
ツイッター漫画としてバズりそうな内容だな、と見ていて思った。佐野史郎が演じるしょぼくれた社員と、勝地涼が演じるはつらつとした幽霊が、BL的に美味しそうな関係性。どちらかが女性ならラブコメにできようし、女性同士なら社会人百合にできよう。
若手社員に指導されながら実際の会議で失敗して中年社員がへこむ展開もちゃんとあるし、プロジェクト完成前に若手社員が成仏してひとりでやりとげなければならなくなる結末もちゃんとしている。
ただ、他にも無数の社員がいたというオチは、投げっぱなしなのに類型的で、感心できなかった……


「マスマティックな夕暮れ」は、優等生の少女が、不良グループから魔術書の解読をたのまれる。不良グループのリーダーを蘇生させるために。
原作はヨーロッパ企画で、後半は「クリスマスの怪物」が終わった後で放映。構造としては「幽霊社員」に近いが、無駄に算数的な計算をもとめる魔術書ギャグがキレキレ。少女と不良が距離を縮める日常でも無駄に数学が応用されて、バカバカしいネタの連発についつい笑ってしまった。
ただ前後にわけるほど展開の飛躍はなかったので、そのまま1エピソードで気持ちよく最後まで見たかった感はある。あるいは前半までの流れで、現実には魔術は不可能だったというオチでも良かった。


「クリスマスの怪物」は、IT社長と華美な交際をつづける女性が、7年前の忌まわしい過去にさいなまれる。
いかにもホラーらしい演出と物語で、イジメをおこなっていた過去が恐怖として返ってくる展開から、主人公の女性が隠していたことまで、何もかもテンプレート。
しかしテンプレートなりにていねいに作っていて、ちゃんと登場人物にひどい行動をとらせているし、転落後の描写なども作りこんでいる。被害者にあえて明るいバカを演じさせるイジメ描写も痛々しい。
新鮮味はまったくないが、ウェルメイドな物語としては完成していた。