法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「運動団体や資料館に爆破予告をすると面白くなりそう」と語っていた人物が、「娯楽作品の表現や内容を制約」を「PC」がおこなう光景しか観測していない不思議

2年前、上記のようなツイートをしていたBeriya氏。当時の私は下記エントリで批判的に言及した。
爆破予告に対して運動団体が反応したことを「音の出るおもちゃ」あつかいするツイートを見かけて、気持ちが落ちこんでいる。 - 法華狼の日記
そのBeriya氏が、漫画家の速水螺旋人*1と下記のようなツイートをしていた。

2年前をふりかえればわかるように、虚構における多様性を賞揚を制約する論をさがすまでもない。現実で暴力的な表現の制約が実行されつづけている。
「ネット」に限定せずとも、公正を目指した言論や表現への不当な制約は日本社会にありふれている。下記エントリで指摘したように、法哲学者や公権力まで加担している。
日本社会における、言論や表現への弾圧と批判をわける基準 - 法華狼の日記
その制約をBeriya氏のような人物は批判するどころか、第三者の嘲弄*2にまで利用してきた。なるほど、踏みつけた足の裏を人間は見ることができない。


もちろん娯楽作品でも、さまざまな表現が不当に攻撃されている。多様性の賞揚などにいたらずとも、愛国者に不都合な考証をおこなったり、被差別者の文化をとりこんだりするだけで……
14年ほど前、南京事件を描いた漫画『国が燃える』に対して、右翼活動家や政治家が出版社へ抗議して、実際に表現が改変され連載が打ち切られたことがあった。
表現への抗議と攻撃 - 法華狼の日記
7年ほど前、大河ドラマ平清盛』において「王家」という呼称を用いたことで激しいバッシングがおこなわれ、それが公式にまで伝わったことがある。
〈平清盛〉の「王家」批判は同調圧力によるヒステリックな反応│NEWSポストセブン
6年ほど前、TVアニメ『さくら荘のペットな彼女』の原作からのアレンジのひとつとして朝鮮半島の食文化が描写されると、制作スタッフへの誹謗中傷がおこなわれた。
『さくら荘のペットな彼女』サムゲタン選択的批判という問題 - 法華狼の日記
半年ほど前、映画『万引き家族』がカンヌ映画祭で賞を受けながら監督の主張とともに反日的な作品とされ、日本での評価が分断されていたことも記憶に新しい。
「左右両派!のバトルは終わりにして」万引き家族の是枝監督がブログで訴えたこと
つい先日も、連続テレビ小説まんぷく』でモデルとなった人物の証言通りに憲兵を描写したところ、近現代戦史を専門とするノンフィクション作家*3などが反発した。
朝ドラ「まんぷく」の拷問シーンに「憲兵が気の毒」などと噴き上がるウヨさんたちの脳内ファンタジー - 読む・考える・書く
念のため、上記の作品に対するあらゆる批判が全て不当とは断言しないし、表現を制約する強制力や不当性はおのおので差異はあるだろう。
その一方で、上記の作品が、不当な批判を向けられたごく一部でしかないことも事実だ。せめてそのことは念頭において表現の制約を考えてほしい。

*1:はてなアカウントはid:rasenjin。先日にIDコールは廃止されたが、私がツイッターをしていないので、代替的に記述しておく。

*2:2年前のツイートにある「特定の弁護士」は、こちらの記事で中傷されたひとりとしてコメントしている唐沢貴洋氏のことだろう。ネット中傷後絶たず 人権侵害1900件 :日本経済新聞

*3:神立尚紀氏のこと。はてなブックマーク - 神立尚紀さんのツイート: "朝ドラ「まんぷく」乱暴な憲兵の拷問シーンでもう見る気が失せた。昭和30年代40年代の戦争ドラマの見過ぎだよ。いつも悪者に描かれて、憲兵が気の毒だ。"