法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』テレビ局をはじめたよ/人の身になるタチバガン

今回は前後とも原作があるが、時間配分を変えている。さまざまな劇中番組が展開される前半を長く、復讐に終始するシンプルなプロットの後半を短く。


「テレビ局をはじめたよ」は、TV番組にコネで出演したスネ夫に対抗して、みんなもTV番組に出ようと考える。そこで近所一帯へ強制的に受信させる放送局を開設して……
原作はスピンオフ『ドラミちゃん』の一編として描かれ、改変して『ドラえもん』の単行本に組みこまれたエピソード。2012年にアニメ化したばかりだが*1、ひとつひとつのディテールを濃く、現実の番組パロディと感じさせるくらい克明に描写して、味わいを変えている。
あらためて素人のネット配信を予見したかのようなSFだと思う。小道具の科学的考証よりも、どのような機能を人々が求めて、その機能が実在すれば人々はどうふるまうかを、スラップスティックとして展開。手作り感に満ちた映像や、画面全体が消えるラストのメタ演出など、生活感の細かい高橋敦史コンテが良い方向に出ていた。
2012年版と同じく、ドラえもんが登場するアレンジを加えて*2、ドラミに対抗する一幕も。視聴率の上げ下げが秘密道具に表示され、それに一喜一憂するように番組制作者がふりまわされる。その迷走が風刺として普通にわかりやすくていい。


「人の身になるタチバガン」は、ジャイアンスネ夫のイジメに対抗するため、撃った相手と立場が変わる秘密道具を使用。のび太は復讐のため、ジャイアンスネ夫のところへ向かう……
2005年以降では初めてアニメ化された後期原作。よく似た機能の秘密道具「タッチ手袋」が2015年にアニメ化され*3、差別化が難しそうなところ、対象にさわらなくても遠くから撃てば機能する「タチバガン」ならではの展開をアニメで追加して、新たな魅力をつくりだしていた。
山口晋コンテも、過去の仕事よりクローズアップで被写体に接近していると思ったら、撃つ対象と距離がある表現として意味があった。画面奥のロングショットのキャラクターと立ち位置が変わるだけで単純に面白いし、第三者との複雑な立場変更もわかりやすく表現。クライマックスのアニメオリジナル展開では空中との立場変更が、めまぐるしいアクションでありつつ、シュールな絵面の楽しさもある。