法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ドラミのお花見メロンパン/ペコペコバッタ

「ドラミのお花見メロンパン」は、なぜか花見でドラミがメロンパンを口にしない。メロンパンが気にいらないのだと考えたみんなは、おいしいメロンパンを買おうとしたり、材料からつくろうとするが……
 清水東脚本で、季節にあわせた花見の席を舞台として、ドラミのメロンパン好きに焦点をあてたアニメオリジナルストーリー。
 良い席を確保して提供したりメロンパンのアドバイスをするスネ夫と、兄としてドラミをつきはなそうとするドラえもんが留守番を押しつけられる理不尽展開が笑える。今回は祝いの席なので、ジャイアンの思いこみをスネ夫が指摘しても暴力が返らなかったりして、ちゃんと理不尽さがギャグにとどまるバランスになっている。
 そこからポップ地下室と日曜農業セットで麦を育てたり、世界中から最上の食材をあつめる展開が、適度な障害があって波乱万丈で楽しい。調理中にドラミが帰ってきて、気づかれないようスネ夫のび太たちにつたえるサスペンスも上等。みんなが焼いたメロンパンをドラミは口にせず、ジャイアンが先述の思いこみで入手した北海道メロンをメロンパンにつかうことで、花見らしい華やかさになってドラミに食べさせることに成功する展開も意外で説得力もあって楽しかった。
 ただ、ドラミが食べない理由がダイエットという最初に予想した一番つまらない真相なのは残念。メロンパンを買おうとして、どの店も売り切れという局面があったので、ドラミが現代に来て我慢できず食べつくしたのだろうかとも想像したので、それ以上のひねりがあるオチを期待してしまった。


「ペコペコバッタ」は、のび太がサッカー遊びのせいでどら焼きを水たまりに落としたが、よけなかった側の責任にされてしまった。そこで罪悪感をひきだす秘密道具をドラえもんが出すが……
 全面リニューアルした2005年に映像化した短編をリメイク。絵コンテの山口務という名前は検索しても『ザ☆ウルトラマン』くらいでしか見つからないし、同一人物かどうかもわからない。
 原作は連載初期なので一般的な作品イメージよりスラップスティックで暴力的なのだが、今回のアニメ化ではアレンジを入れていないのに一般的なイメージに近い。
 おそらくアニメオリジナル描写を追加せず、そのまま通常の尺で映像化したことが効果をあげたのだろう。密度たっぷりに理不尽なまでの謝罪ギャグがつめこまれた原作から、ひきのばされ間延びしたことで通常回と同じくらいの密度になったのだ。意図的だとしても無意識だとしても興味深い映像化の方法論になっている。
 優等生を演じている少年の悪事はいくつか変更されているが原作から印象は変わらず、のび太のつきはなした論評に違和感がない。のび太が犯罪者を交番までおくりとどける場面で、なぜかのび太が犯罪者に縄でしばられている描写に説明がないが、今回のギャグ時空のなかでは違和感がない。