それぞれ2週分をそのまま足したような2時間SP。ニチアサの時間移動にともなって2時間ドラマ枠になっていたところで放映。こういう枠の使いかたもあったか。
また、ドラ顔ジャンケンは映画のコスチュームを着た作画に変更。それぞれの作品の映画予告も流れた。
「神さまロボットに愛の手を！」は、のび太の嘆きに応じて秘密道具の神様を出す。神様と知らずに親切にすると、三つの願いをかなえてくれるというが……
2006年にアニメ化した原作短編の再映像化。童話を秘密道具で再現するような本筋はそのままに、2006年版も今回も細部で説明を足している。原作では省略されていた豚になる過程は、2006年版も今回も神さまロボットの能力として見せた*1。さらに今回は冒頭ののび太の嘆きを漫画を返す結末で処理していて、すべての課題が処理されたという安心感がある。
コンテは寺本幸代で、のび太の嘆く姿を長いカットで見せたり、雨降り後の水たまりを伏線としてきちんと見せたり、細やかな描写が楽しめた。
「円ピツで大金持ち」は、いつものように金に困ったのび太がドラえもんへ泣きつき、書いた金額がそのまま使える鉛筆を出してもらう。のび太は安心して無駄づかいするが……
きちんと原作者生前に単行本へ収録され、作品のパターンを少しずらした有名な短編のアニメ化。しかし意外なことに、2005年のリニューアルから2017年のリニューアルまでアニメ化されなかった。
基本がよくできた物語なので、ていねいに映像化するだけで充分に楽しめる。ドラえもんの黒い笑顔などの表情や、つみあげた買い物が障害物となる場面や、街頭に照らされながら走りまわる結末など、とにかくドラえもんがらみで良い作画が多く、その内容も味わい深い。
数少ないアニメオリジナルとして、ママがお買い得品を楽しむ描写があった。のび太の金銭感覚を批判する意味はあるものの、特に本筋にかかわるわけでも斬新な視点というわけでもない。良くも悪くもない無難なアレンジ。
「のび左エ門の秘宝」は、のび太がお年玉を宝探し形式でもらうが、苦労のわりに金額が少ないことへ文句をつける。そこで実際に先祖の宝を探すことにしたが……
2009年にアニメ化され*2、2011年に再放送された*330分SPの、2度目の再放送。
放映時期にあわせた時候ネタではあり、これを見ることで今回に放映されたエピソードすべてが金がらみの教訓ということに気づけた。
しかし、2017年に映像面がリニューアルされた現在、桜井この実作画監督の絵柄は、さすがに古臭いものがある。CMで寸断されるタイミングが悪かったのも難。
「おシーリングで勝負だゾ」は、お尻で廊下をすべる人間カーリングで、ひまわり組とばら組が対決。パロディながら内容はまっとうなスポーツアニメで、高倉佳彦一人原画によるアニメーションも安心の安定度。レギュラーキャラクターの活躍もまんべんなく、設定から期待できるだけの内容にはなっていた。
「母ちゃんがおたすけするゾ」は、風間家の母親がぎっくり腰になったため、ひょんな流れで野原みさえが家事をすることに。現実的な範囲での上流家庭とのギャップ描写で笑わせつつ、わりと全員が善意で行動しているため不快感が少ない。しかし風間家の母親が比較的に高年齢らしいという描写は初めて見たが、定番なのだろうか。
「雪の宿のミステリーだゾ」は、2015年に放映された雪ダルマ消失事件の再放送。さびれながらも風情ある旅館にとまった野原一家が、個性的な宿泊客とともに巻きこまれる。高名な彫刻家が手すさびに作って100万円の価値があるという雪ダルマの設定から、それが消失した経緯や犯人の動機まで、前後編でじっくり探っていく。登場人物の言動を追っていく消失の謎解きはていねいだし、すべてが解決したかに見せてからのどんでん返しの切れ味もいい。やや変装が便利すぎる気はするが、驚くほど構造のしっかりした本格ミステリだった。
「アゲアゲ母ちゃん29号だゾ」も、2015年に放映された凧揚げ競争の再放送。凧揚げを手作りする楽しみを前半で描きつつ、バカバカしい経緯からみさえが赤面する試合が後半で描かれる。ストッキングを尻尾にした凧で恥ずかしがるのがみさえだけで、周囲は最終的に素直に賞賛したことで、逆にあまり嫌悪感がなかった。
*1:好みとしては、既存の秘密道具を組みあわせて説得的な過程をアニメオリジナルで見せてほしいところだが。
