虚実いりまじるエピソードを集めた2時間SP。
人類史の重要な場面にビールがあったという学説を集めた「人類を救ったのはビールだった!?」は、通説と奇説がいりまじる。古代エジプト文明でビールが貨幣替わりだったとか、かつてヨーロッパで飲料水の代替でビールが飲まれていたとかいった有名な史実から、麦を育てる農耕や土器の発明はビールを作るためといった新説まで登場。初期の農耕による穀物は歯の病気を生んで平均寿命を縮めた、つまりは一種の嗜好品だったという説があり、それからするとビールが嗜好の一形態として好まれていたという想定に違和感はない。また、米国ドキュメンタリーらしく酒場でのもりあがりが米国独立にいたったと主張し、ただの奇説かと思いきや、米国国歌のメロディが元々は酒場で歌われていたものという豆知識を引いてくる。
恒例のネットなりすましをあつかった「キャットフィッシュ」は、愉快犯ではなくストーカーという初パターン。しかもインターネットを使って騙すのは2度目だという、“騙される男も少しは警戒しろよ”と被害者へ責任を求めたくなってしまう真相。
マッコウクジラを撮影したドキュメンタリー「クジラの知られざる生態」は、素直に動物番組らしい作り。マッコウクジラが噴出した糞を採取してイカの嘴を見つけたり、クジラ同士がまとわりつきあって半透明の皮膚を削り落とす垢すり行為を撮ったり、クジラの親が浮力をおぼえていない子を下から支えて呼吸させてやったり、けっこう珍しい映像が多くて感心。
イタリアに留学した米国女子大生が犯人と疑われた「天使の顔に秘められた真実:イギリス人留学生殺人事件」は、イタリア警察の不備だらけの捜査を暴く。容疑者の容貌や奔放な行動に着目して加熱するタブロイド報道もひどいが*1、イタリア警察がまともに現場保存をしていないことがわかる映像の乱暴ぶりが何より唖然とさせられる。証拠とされた被害者の下着は長期間現場に放置されていたため容疑者のDNAが付着する機会は殺人以外に存在したし、ナイフはそもそも被害者の傷口と一致しない*2。また、2005年と最近の事件ながら映画化もされたそうで、番組ではタイトルが出なかったが、番組公式サイトによると『天使が消えた街』という作品らしい。
*1:集団セックス殺人のふざけた裁判 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
*2:もちろん日本も他人事ではないが。