法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』火星ピクニック/テレパしい

ひさびさに前後のエピソードで時間配分を変えている。「GW特別企画!」としているのは、時間を多くとった前半部分を旅行のように楽しんでほしいという意図だろうか。


「火星ピクニック」は、火星人が実在するというのび太と、火星人は実在しないというスネ夫が対立。実際に火星で確認することに決まったが、どこでもドアで直行せず、ロケットで移動することに……
小林英造脚本によるアニメオリジナルストーリー。原作短編「ネッシーがくる」を思わせる科学的な論争は火星の人面岩写真だけで処理して、ロケットによる宇宙旅行と火星における探検が物語のメイン。よく取材されていて、宇宙旅行そのものを楽しむドラマとして楽しい。フリーズドライ宇宙食を楽しむ描写や、変わりばえのない宇宙の風景に飽きる心情など、過去の宇宙エピソードにないディテールが楽しめた。
現実感ある宇宙描写の雰囲気をそこなわず、前時代のSF的な火星人を登場させたことにも感心させられた。火星人と直接は関係ないはずのディテールに伏線をもぐりこませ、ふたつの説得力ある真相を用意。原作でも何度か宇宙人が来訪した作品なので火星人も実在しうると思って油断していたので、本気で驚かされた。
映像面のスタッフは、五月女誠子コンテに小野慎哉作画監督。かなりスペシャルな映像になっていて、取材したディテールに実在感を与えている。ロケットの噴射の作画などのアクションも良く、火星人の触手も見事。


「テレパしい」は、しゃべることもめんどうくさがるのび太に怒って、ドラえもんが秘密道具を出す。それは思ったことが相手につたわる機能があり、のび太は最初こそ喜ぶが……
実写映画化もされた過去の人気漫画『サトラレ』を、さらに先取りしたかのようなエピソード。思ったことが漏れ出すことの問題性に気づかないのび太の頭が悪すぎて、あまり原作短編から好きではない。
ただ時間配分が短いので、原作から描写をほとんど足し引きせずにアニメ化できていて、改悪が存在しない良さがあった。主人公にとっても周囲にとっても不快感が強いエピソードなので、短い時間ですませたこと自体が娯楽としてもプラス。