法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season15』第5話 ブルーピカソ

無名時代だったため、未発見作品の存在が期待されているピカソ青の時代。その失われた一枚が再発見され、オークション会社にもちこまれたという。
かつてその一枚を鑑定しようとした画廊主と、画廊主と懇意だった画家と、オークション会社の社長の因縁が、ひとりを落下死に追いやる。


ひさびさに昔のような密度が濃い、二転三転するサスペンスを楽しめた。謎解きの最中にエンディングテーマが流れるほど、ぎりぎりまで事件の深層へと掘り進んでいく。
まず、かつて画廊主が鑑定しようとしたら贋作にすりかわっていた事件だが、懇意だった画家が犯人視されるまでは順当。番組でも中盤からは自明視される。最後に明かされる贋作事件の全体像*1も、予想の範囲内ではあった。しかし、それが現在までの人間関係にどのような影響を与えたかは、なかなか見えてこない。
オークション会社に絵をもちこんだ老婦人や、オークション会社で鑑定を主張する学芸員や、かつての画廊主を知っている喫茶店のマスターなど、脇役のような登場人物ひとりひとりに意味がある。ややミステリらしい人工性が露骨ではあったが、ずっと人間関係を掘りおこす捜査がつづくから、その輪から真犯人が外れていることに気づかせない。


また、なかなか芽が出ず贋作事件へ手を染めた画家の心情や、彼を世に送り出してあげたかった画廊主の心情を描いて、きちんと芸術テーマのドラマとしても成立している。その心情を、きちんと映像的な伏線とともに“絵”として表現しているところも見事。

*1:画廊をつぶす目的と違約金をせしめる目的の一石二鳥をねらって、最初から贋作をもちこんで、途中ですりかえられたかのように装った。