法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』しずめ玉でスッキリ/のび太のお宝鑑定

今回は前後とも原作あり。作画は良好で、ややアレンジは強め。


「しずめ玉でスッキリ」は、さまざまなものを地中に沈める秘密道具で、散らかした物をかたづけたり、イタズラしたりするが……
カンシャク玉のような2種類の小さな玉を、足元ではじけさせて地面を液状にする、ビジュアルのおもしろさ。ほとんど原作通りだが、地中に沈んだドラえもんが秘密道具をつかえないという説明を足して、ジャイアンをめぐる後半の騒動を大きくふくらましている。
一袋まるごと「浮かび玉」が残っていたという原作のあっさりした解決ではなく、ひとつだけ見つけた「しずめ玉」でドラえもんを救出して問題を解決してもらおうとする展開は、それなりに説得力もあって楽しい。アニメオリジナルのお遊びかと思ったドラ焼きが伏線だったことには感心した。


のび太のお宝鑑定」は、のび太が金欠に苦しんでドラえもんに「自動質屋機」を出してもらうが、より貧しさに苦しんでいる青年と再会して……
こちらもほとんど原作通りで、やはり中盤から大きくふくらましている。そのアレンジの意図はわかりやすいが、あまり感心できなかった。
たとえばアニメオリジナルでしずちゃんの家に寄り道して、価値が高くなる古道具もあることや、金銭では変えられない価値もあることを説明する。しかし、ここで当初の目的であった漫画本の存在が物語から忘れられ、以降は出てこなくなってしまう。原作では、いったん家に帰っているというのに。
そして画家だった青年に対して、のび太ドラえもんが悪気なく暴言をはく描写がなくなってしまっている*1

原作では、のび太ドラえもんも抽象画をラクガキととらえて、かわいそうだから念のため試しただけだった。だから秘密道具に高評価されるギャップがきわだった。それが今回のアニメでは、青年の目前で秘密道具をつかうこともあって、暴言ギャグが出てこない。アニメオリジナルで部屋の古道具をすべて売ってドラ焼きをわけあう青年のやさしさは良かったのに、それとの対比も生まれない。
さらに画廊が買いつけにくるオチも、道端で絵を売っているところにやってくる原作とちがって、たまたま通りがかったところで一目見て気にいるだけ。ここは好悪わかれるだろうが、見ている人は見ているという原作の描写のままが良かったな。

*1:画像は、てんとう虫コミックス18巻92頁より。