法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『映像研には手を出すな!』第1話 最強の世界!

大童澄瞳原作の、アニメを作ろうとする女子高生3人の漫画をTVアニメ化。NHK総合で放映されているが、なぜか配信はフジテレビオンデマンド。
eizouken-anime.com
しかし原作と違って『未来少年コナン』のタイトルこそ出ないものの、その映像の魅力を見事に再現して劇中で流せたのは、やはり同じNHKアニメだからだろう。主人公による演出の論評もうなずくばかり*1
湯浅政明監督が自社のサイエンスSARUで制作した映像も危なげない。初回はこれがTV初コンテとなる本橋茉里が手がけながら、細かい日常芝居に見どころが詰まっている。緻密でいて描線は手描きの味わいを残した背景美術に、シンプルなキャラクターが小気味よく動く。
アニメーター志望という水崎がスケッチブックを開いた場面などは、「そんな女子高生おらへんやろ!」とツッコミたくなるベクトルの巧さで笑った。いや美大志望などならわかるが、てっきりアニメキャラの模写がならんでいるとばかり予想していたので、そのギャップについ笑ってしまったし、冷静に考えるとアニメーターになりたいという本気度を感じる。
絵を重ねて得意分野を組みあわせ、思いつくまま設定をつぎたしていく主人公たちの姿も、クリエイティブの本当に面白い瞬間のひとつをうまく抽出していた。


湯浅監督がコンテに手を入れたらしい後半もダイナミックな作画が楽しめる。少し『リトル・ニモ』のテレコム版パイロットフィルムを思い出した。
よく見るとデジタルを使った省力も多く、3DCGで組んだ背景もシンプルな箱でしかないが、的確なレイアウトとカメラワークで広大な空間をちゃんと感じさせる。
ちなみに公式サイトの浅野直之インタビューによると、作画的な見どころとなったカイリー号の飛びたつ場面は、松本憲生が担当したという。
NEWS|TVアニメ『映像研には手を出すな!』公式サイト

技術のある方でなければ、上手くいかなかったかもしれない、と思うようなシーンだったので、今回、松本憲生さんが担当してくださったおかげで、アニメ―ションとして、見ごたえがあるシーンになったのではないかと思います。

同じ浅野直之キャラクターデザインの『おそ松さん』に参加して、その時にフラッシュ作画もおこなっていたので、考えてみると順当な流れではある。


そうしたアニメーションの根幹的な面白味を展開しながら、クールダウンして日常にもどって、ちゃんと若者たちが創作を目指す物語としてまとめたのも見やすかった。
アニメーターとしては狂騒的な画面をつくりながら、物語はよどみなく進めて人々への目線は優しく、映像のフェティシズムに淫しない……そんな湯浅監督の良さが出ていたと思う。

*1:アニメガタリズ』には少しこの方向を期待していた。