法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』エスパーぼうし/かわいい雨傘の物語

エスパーぼうし」は、友人みんなでスネ夫の家で出し物をすることになり、のび太は見よう見まねで手品をしようとして失敗。そこで超能力が使えるようになる帽子をドラえもんに出してもらう。
ほとんど忠実に原作をアニメ化しているが、現在の作品イメージと整合するようにアレンジが加わっている。それでいて原作のギャグも現代的に移しかえている。
たとえば初期に書かれたため、しずちゃんの人形とのダンスを原作ののび太はバカにするだけだった。それを今回のアニメでは超能力で手助けして、芸として見ばえを良くしている。
のび太が小便をもらしたり、瞬間移動に失敗して全裸になるギャグも、それぞれ直接に見せないようアレンジ。一種の自主規制だろうが、それを逆手にとって視聴者に想像させる表現となり、じわじわ笑える表現となった。


「かわいい雨傘の物語」は、傘を忘れるためにママにしかられるのび太が、忘れないよう傘に人格を持たせる。しかし最初こそかわいがっていたものの、少しずつうっとうしく感じるようになっていく。
季節ネタのアニメオリジナルストーリー。短編ではギャグが多かった清水東脚本らしからぬ、愛玩物との日々を情感たっぷりに描いていく。
「たましいマーカー」というオリジナル秘密道具で顔を描くと物体が命をやどすという発端で、既存の秘密道具でも同種のエピソードはできるだろうが、より愛着を持てるという意味では悪くない。結末の描写から、のび太といっしょに行きたいため雨を欲する傘が、てるてる坊主を反転させたものという位置づけともうかがえ、ならば顔を描くことは物語の必然とすらいえるだろう。
ただ、雨傘をペットとすることを受けいれて、それをオチにしたのは『ドラえもん』らしくない。人工的なペットに対しては、感動的なテンプレート描写をパロディしたギャグにするか、いずれペットと別離して日常に回帰していくか、どちらかの結末が原作らしいと感じてしまう。たとえば梅雨が明けるころ、すっかりマーカーのインキがあせた傘をさして、どこまでも歩いていくのび太の背中を映すとか、そういう方向性が私個人の好みでもある。