法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜THE LAST SONG』第21話 鋼鉄の鬼

神化49年8月の荒川。米国からもたらされた巨大ロボットNUTSを移送する列車が橋をこえようとしていた。
そこに鋼鉄探偵とアラクネがあらわれ、破壊工作を開始。普通の人間がNUTSに乗りこみ、超人に対抗する戦闘力を発揮するが、予想外の結末をむかえる。
そしてどちらにつくことも選べなかった人吉爾朗は、知らなかった自身の来歴に向きあうことになる……


會川昇脚本回。過去に登場した超人や事件をふりかえり、新たな意味をつけくわえつつ、一気に本筋が進んだ。
退場したと思われた田中角栄モデルの首相が再起してロッキード事件を思わせる陰謀劇にからんだり、東アジア反日武装戦線による昭和天皇暗殺未遂をモデルにしたバトルが展開されたり、近現代史をモチーフにしたサスペンスとしても充実。
そして近現代史モチーフの究極として広島原爆投下が引用され、それが主人公のプロフィールに直結する。世界観とドラマが融合し、それぞれの物語における必然性を高めて、修正された歴史という真実がたちあらわれる。このまま架空の歴史でしか描けない物語を見せてくれることを期待したい。


大塚健によるコンテ演出も、アクションの多いエピソードを無駄なく表現しきっていた。多くのキャラクターを登場させながら無駄に動かさず、見せ場にリソースをそそぎこむ。
特に、中村豊作画らしきメガッシンと鋼鉄探偵のバトルが素晴らしい。断ち切るように終わった第3話のクライマックス*1を同じアニメーターで再演して、それぞれの信念の衝突した先を描ききった。回転運動のアクションや、内臓火器の攻防で、映像として機械超人らしさを表現できているところも良かった。


あと、いかにも現代ヒーローらしい主人公の葛藤を、大人なら誰でも身近に感じる凡庸な主張と切りすてた場面も印象的だった。
主観的には大人になったつもりで、客観的には思考を止めているだけという観点は、このような物語ではかなり珍しい。