法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』第9話 果てしなき家族の果て

神化16年、真珠湾攻撃でひとりの日本人が捕虜となった。その捕虜はどのような手段をつかっても処刑することができない超人だった。
一方、日本では時代をこえて存在しつづける一家が、父親の帰りを待ちわびていた……


次回予告でも売りにされた辻真先脚本回。永遠に生きる家族の物語を、80歳をこえて現役の作家に発注するという、夢のような思いつきを本当にやってしまった。
「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」 新旧超人対談企画第5回 シナリオライター編 辻 真先×會川昇 3ページ目 | アニメ!アニメ!

「言っていただければ何でも」というありがたいお返事をいただいたので、「大変恐縮ですが、ものすごく長く続いているアニメ、あの人たちが、もし本当に歳をとらないという設定だと、どうですかね?」と振ったら、「それって面白いですね」と……。

しかし同時代を生きた人間であり、歴史ミステリも手がけている作家だけに、充分に内容も手堅い。むしろ普段より同時代の出来事を濃密にとりいれているくらいだ。この放送時期に真珠湾攻撃の捕虜第一号が引用されたこと、それだけでも印象深い*1。それでいて物語のコンセプトも明快で、きちんと一話で完結していた。レギュラーキャラクターの言動も特に違和感ない。
いつもと違うのは、結末で多くの登場人物がひとつの場所に集まっていること。誰の意図かはともかく、いかにも推理小説家らしいシチュエーションだと感じた。そこで一部の人間しか真実を知らない断絶ではなく、直面した真実への評価のちがいで断絶が描かれる。いつもと同じテーマを、ちがう語り口で見せる。
大ベテランのブランド名がなくても、ゲスト脚本回として普通によくできていた。


興味深かったのは、意外と『サザエさん』より初代『ゴジラ』のモチーフが強かったこと。太古から生きつづける超人家族は、デザインなどの表層こそ磯野家だが、戦争で歴史の表舞台にあらわれて危険視されるのはゴジラそのもの。
そしてゴジラを倒すために超兵器オキシジェンデストロイヤーがつかわれたように、超人一家は超兵器バイオデストロイヤーをつかわせた。そして時代の闇と心中するように、どちらも海へと消えていく。ゴジラオキシジェンデストロイヤーが鏡写しであることを、構図が逆転しても成立すると示すことで強調してみせた。

*1:この捕虜第一号を描いた作品としては、2011年にNHK名古屋が制作したドラマスペシャルがよくできていた。『真珠湾からの帰還〜軍神と捕虜第一号〜』 - 法華狼の日記