法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season14』第20話 ラストケース

警察学校の射撃訓練場で、伴野という訓練生が教官や訓練生を射殺して逃亡。閣僚へのテロリズムを宣言した。
一方、謹慎中の冠城は公安調査庁時代の知人、鴨志田慎子と再会する。鴨志田は逃亡した伴野と連絡がとれるともちかけるが……


season14の最終回にあたる2時間SP。冠城が興味本位で捜査妨害し、それを杉下が見逃した第15話が*1、同じ輿水泰弘脚本回で返ってきた。
ただし警察の違法捜査があらためて問題となるのではなく、ふたりが謹慎処分をくだされ、意趣返しのように捜査妨害されるという展開。
推理のメインは、訓練場から消えた銃弾の数合わせ。その数字の合わなさから第三者の存在が示唆され、そして消えた銃弾の行方が問題になるかに見せかけて、それを囮とした証拠確保にむすびつく。つまり厳密な推理というわけではないのだが、わかりやすくドラマを引っぱる謎解きとしては充分なものではあった。


物語のメインは、テロリズムへの過剰な恐怖にある。このドラマが描きつづけてきたテーマであり、それに閣僚も参加しているという陰謀劇として発展させた。
警察関係者や現役閣僚が複数参加してまで国家をテロリズムへ退治させようとする展開は、陰謀論としてならばバカバカしい。わざわざテロを起こさずとも、それぞれの仕事で訴えればいい。しかし現実の政治と見比べれば、体感治安の悪化を政治家が煽るのは、フィクションのなかの笑い話ではない。要するに、どれほどテロを脅威視して警察国家化しようとも、テロに対峙するためには不充分というわけだ。
ただ、関係者がつぎつぎにテロにかかわっていくとわかっていくだけだったのは、展開として単調さを感じないでもなかった。ひとりくらいスケープゴートにされた無関係な人間か、逆に個人として真相をさぐっている善意のヒーローがいても良かったかな。テロに参加する個々人の態度が違っていて、テロにかける願いが異なっていることまで描けていたのは良かったけれど。