法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season16』第6話 ジョーカー

妻の転落死が自殺という結論に不満をもった刑事が、殺人の目撃証言を偽装したとして懲戒解雇される。
元刑事は警視庁を訴え、大河内監察官が被告席に座る。やがて妻が脅迫されていた情報が浮かびあがるが……


脚本家は、前回につづけて浜田秀哉。初参加の前回はモチーフが古臭くて安易と思ったが、今回は目新しさこそないがシリーズの要点を無理なく濃密にまとめていて悪くない。
予告では前シーズンの第16話*1で登場した連城弁護士がピックアップされていたが、今回は原告を補佐して特命係を挑発する立場にとどまる。終盤で興奮した原告を抑えようとする場面まである。原告の望みをかなえるよう行動するが、あくまで特命係を動かすという間接的な動きにとどまる。
ドラマの中心は、捜査をうちきらせた大河内の葛藤と、暴走してまで妻の事件の真実をあばこうとした元刑事にある。警察の、組織としての融通のきかなさと、権力に捜査を止められる問題を描きつつ、末端が正義感で暴走することへの批判や、それなりの自浄作用も描写されていて、刑事ドラマとして水準的な出来。


まず、妻の義父が有力政治家という設定から、捜査中止の圧力が忖度によるものだと見当をつけることはたやすい。妻がビッグデータの解析を仕事にしていて、そこから浮かび上がった別の転落死との関連から真相が明らかになっていくのも、手がかりの提示が遅い感じはあった。
しかしビッグデータで浮かびあがる陰謀がシンプルな分、説得力はけっこうある。主軸の事件には隠された真相などなかったのに、すべて隠そうとしたために全体がダメージを負ったという顛末も興味深い。推理ドラマとして真相の位置づけに新鮮さがあるし、古典的なテーマでありながら現在進行中の社会問題を想起させる。