法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「小説家になろう」で異世界転生が多いのは、単純に二次創作の人気ジャンルとして残っただけという可能性はないのかな

読者側や作者側の方針は指摘されているのだけれど、なぜか公開側の事情についての文章を見かけないので、念のため書いておく。
なぜなろう小説に異世界ファンタジーが多いのか - orangestarの雑記
かつての「小説家になろう」は二次創作作品も多かった。オリジナル作品ばかり掲載されているのは、運営の方針が二次創作の全面禁止にふみきったため。
http://syosetu.com/site/nizi/
ガイドラインに明記されているように「作成及びインターネット上での公開を許可されている企業様並びに作者様の関連」「著作権の保護期間が終了している作品」はもちろん禁止ではないのだが、それですら「条件にあてはまる一部の作品に関しましては、運営側で情報を確認の上、投稿を受け付ける場合がございます」と許諾には慎重な書きぶり。
そこで二次創作のみを作りたい作者は、それが許容されているサイトとして「Arcadia」「ハーメルン」等に移動していった。しかし二次創作のように既存の枠組みを利用しつつ、それが特定作品の枠組みでないジャンルは残ることができた。そうして昔からの作品群が残ったことで他より多く目立つジャンルがVRMMOであり、異世界転生であった……という側面もあるのではないか。
つまりは別の意味で「ケチがつけられない」ジャンルが残ったということ。


こう考えると、世界設定の表層においてオリジナリティが低い作品が目立つのも必然的といってもいい。借用した部分のオリジナリティが低いからこそ、二次創作の禁止規定に引っかかりにくかったし、たとえ引っかかったとしても修正しやすい。
たとえばなろう小説を1500万文字以上読む荒行の末に得た知見を共有するよ! - はげあたま.orgで「転生などはない純粋な異世界ファンタジー」として薦められている『死神を食べた少女』も、「ドラゴンクエストIII」の二次創作をオリジナルに書きなおした同作者『勇者、或いは化け物と呼ばれた少女』から、さらにスピンアウトした作品だ。絶賛されている『幻想再帰のアリュージョニスト』も、著作権に引っかからない流行を元ネタにした一種の二次創作のはず。


……と、ここまで書いて現在の流れとは異なる意見を検索したところ、約1年前にid:mizunotori氏がまとめていたエントリを見つけた。
「小説家になろう」の異世界ファンタジーと『ゼロの使い魔』について簡単な整理 - WINDBIRD
より具体的に元ネタとして流行していた作品もあげられている。その元ネタの作品も、『ゼロの使い魔』は『ハリーポッター』、『名探偵コナン』はさまざまな古典ミステリを元ネタにしていたのが興味深い。