法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』#5 赤い空の向こう

ついに地球をめざして宇宙空間へあがった鉄華団。しかし大人たちの裏切りにあい、低軌道ステーションで待伏せされる。
ひとまず格納庫で待機していたガンダムで切りぬけ、仲間との合流もはたしたが、針路にはさらなる強敵が待ちかまえていた……


脚本は鴨志田一岡田麿里シリーズ構成とのかかわりは以前からあり、自身の原作アニメ化である『さくら荘のペットな彼女』や、ロボットアニメ『M3-ソノ黒キ鋼-』で一脚本家としても参加していた。しかしこれまでもEDで設定にクレジットされていたとはいえ、シナリオまで書くとは思わなかった。
物語については、群像劇ロボットアニメとして成立していて、素直に良かった。ガンダムの圧倒的な強さを映像で表現しつつ、ちゃんと鹵獲した敵モビルスーツモビルワーカーの役目もある。母船も安全圏にいることはできないし、知恵をつかった戦いをしなければならない。もちろん主人公側だけが頭をつかっているわけではなく、ガンダムの回避力に隠れた問題点を見抜いたりする。裏切りをにおわせていたトド・ミルコネン*1という大人ごと別の大人に裏切られる展開も、ひねくれていて楽しかった。
作画も問題なし。前回に休んだおかげか、全編戦闘でも破綻していない。特に中盤、ガンダムが槍を手にしてからの戦闘で、かぼそい火花のような敵の射撃や、立体的な空間をとぶガンダムの作画が目をひいた*2


また、ガンダムが人型兵器である意味を、戦闘の駆け引きと密接に描いたことも興味深かった。
まずガンダム作品において兵器が人型をしている理由として後づけされた「AMBAC」という設定。宇宙空間で手足を動かす反動で姿勢を変え、推進剤の消費をおさえるという。その設定の名称こそ出さないが、きちんとガンダムの動作としてアニメ化し、たくみな身のこなしで射線をかわす姿を魅力的に描写する。
さらに、その動きをはじめての宇宙空間でおこなえた理由として、この作品独自の「阿頼耶識」という操縦設定をもってくる。なるほど、人体の延長という意識で操縦しているならば、機械は人型であるべきだし、むしろ推進剤は直感的に使いづらいわけだ。
そして推進剤をうまく使えないことこそ、敵が気づいた先述の問題点。設定だけで終わらずに映像として表現され、それが物語と結びつく。


あと、アンカーで方向転換して反撃する展開といえば、『機動戦士ガンダムSEED』の第5話とも似ている。ガンダムが外装を変えたり派手に戦いつつ、決着をつけるのは人型兵器以外というところも同じ。
ふりかえってみると、第4話でロボットの出番がほとんどなかったことも同じか。意識的に似せているのか、それとも少年たちの逃亡劇を描こうとすると似た構成になってしまうのか。

*1:http://g-tekketsu.com/character/24.php

*2:煙モコモコが柿田英樹っぽい気がするが、艶めかしいメカのハイライトとか違う気もする……かつて松田寛が似たようなエフェクトを作画していた記憶も漠然とあるが……