法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』のコロニーはどこに落ちていたか

islecape氏のエントリで、本題とはまったく別個に気にかかる記述があった。
「難民なのにスマホを持ってるのはおかしい」本当に? - そこにいるか - The cape of an island

脚本家の限界でキャラクターの行動や理路に不自然さが生じるのではないかという問題意識はあります(僕は別にプロの創作者ではありませんけれども)。

シドニーは夏とか冬とか雪で真っ白とか言う以前に大穴だろ」といったようなキャラクターの造形や言動により、物語への没入感が削がれてしまったことも1ガンダムや2ガンダムではありません。コロニー落としって情報統制されてたんですかね? それこそ隠しおおせるものでもないと思うんですが…

これはガンダムシリーズ初の公式的な外伝アニメ『0080』でのやりとりを指しているのだろう。
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』公式サイト
劇中では巨大建造物が宇宙から落とされて海となっているはずのシドニーが、そのエピソードでは都市の姿をたもっているかのように会話していた。


この問題については、以前に下記のようなパロディを書いたことがある。
コロニー落としは無かったろう論 - 法華狼の日記

一年戦争時、オーストラリアのシドニーにコロニーが落とされたという教科書の記述は、明らかにティターンズプロパガンダである。

劇中で会話していたふたりは、末端なりに軍人ではあった。しかしコロニーが落とされた時期から1年ほどたっていたし、やりとりした場所も宇宙でのこと。少なくとも一方はシドニーへ行ったこともなければ地球の気象についてもよく知らない。もう一方も宇宙の基地を守る一兵士にすぎず、地球の気象は知っていたもののコロニーの楽着地点を知っている立場かどうかわからない。
コロニーの落とされた場所も、シリーズ1作目の冒頭映像などはたしかに海辺ではあるが、シドニーと確定できる建造物などはない*1。しばらくして文字情報の後づけ設定でコロニーがシドニーに落ちたことにされたが、設定として公式に確定したのは『0080』より後の外伝的アニメ『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』でのことだ。
機動戦士ガンダム0083
そもそもガンダムシリーズはアニメ作品であって、映像化されたものだけが公式設定とされている。それ以外は誰がどのように公表した情報であっても、映像より公式性が落ちるものだという*2。だから『0080』が発表された時点では、観客が整合性のなさを感じたとしても、それは作品単体からの情報ではなかったはずだ。


ただ『0080』のシドニーが、後付け設定の公式化の過渡的なものであったことは事実である。『0080』のスタッフが制作した疑似報道写真集『M.S.ERA』では、シドニーに巨大クレーターができる前後を映した衛星写真が掲載されていた。
M.S. ERA ポピュラーエディション by KADOKAWA アスキー・メディアワークス | ホビーリンク・ジャパン!
もちろん書籍である以上は公式設定ではないわけだが*3、後付け設定をとりこみながらシリーズを重ねていった作品らしい出来事といえるだろう。

*1:機動戦士ガンダム | バンダイチャンネル|初回おためし無料のアニメ配信サービスで第1話が公式に無料配信されている。

*2:等の、複数の正式な表明がされている。

*3:紹介ページ内に、公式採用されていない白色のザクレロが確認できる。