どのような反戦描写を入れたとしても、戦闘によって課題が解決する構造のアニメであれば、戦争賛美として解釈されうる - 法華狼の日記
上記エントリは考えをまとめる途中のメモのようなものだったが、はてなブックマークが意外と集まってしまったので、補足的に前提となる制作者側の発言をいくつか置いておく。
まず、ロボットアニメが戦争賛美として受容される側面について、初代『機動戦士ガンダム』のメインスタッフである安彦良和のインタビューが知られている。
「戦争はかっこいい」と誤解招いたガンダム 安彦良和氏:朝日新聞デジタル
「戦争には必ず前段がある。ガンダムは舞台がいきなり戦争なので、『戦争はかっこいい』とか『弱者の抵抗として戦争は正しいんじゃないか』とかいう誤解を招いてしまった。だから、原作にない物語の過去を漫画で描いた。今はそれをアニメにしている」
制作者の意図と、それがどのように解釈されるかは異なる。時には誤読によって作品の印象が作りあげられてしまうこともある。
制作者側からすれば新作の方向に影響するくらいには、そのような解釈がなされていたということはいえるだろう*1。
『機動戦士ガンダム0080』が戦闘回で売り上げが上昇したことについては、2003年の下記書籍においてインタビューイが言及している*2。
MOBILE SUIT GUNDAM 80/83/08―機動戦士ガンダム ハチゼロ/ハチサン/ゼロハチ
- 作者: 石井誠,岡島正晃,市ヶ谷ハジメ
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2003/03
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
リリース後の反応は意外なものだった。OVAの傾向として1巻目が一番売れるのは当然のことだが、それ以外ではガンダムが活躍するする4巻目が目立って売れたのだ。また、ユーザーからもは「モビルスーツ戦が少ない」という声が多かったという。
このインタビューイや応じるプロデューサーが「意外」と評しているのは、もともと作品が玩具の商業展開を意図せず企画され、「人間ドラマ」を重視しようとしていたため。ガンダムを出さないという案まであったと、高梨実プロデューサーが当時をふりかえっている*3。
ガンダムが出てこないと言う選択肢が出てきた背景の一つに、『80』はプラモデルを出す事を全く考えてなかったというのもあると思います。その頃バンダイ・ホビー事業部のビジネス展開は、SDガンダムが主流になりつつあった頃で、点数が少なくかつ旧作品に似ているものが果たして売れるものなのか、分からなかったんです。
ついでに読み返して目を引いたのが、『機動戦士ガンダム0083』ではメカデザイナー*4として参加した河森正治インタビュー。『マクロス7』では原作者としてスーパーバイザーの立場についた人物が、下記のように語っていた*5。
日本が平和であるわけだから、いい悪いでは言えないんですが、ミリタリーや戦争に関して、日本人は非常に自覚が薄いですよね。本物を知った上で遊ぶのはいいんだけど現実を知らないで、あくまでフィクションで、ロボットプロレスの様式のなかでやっているガンダムの世界だけ知っているというのは、ちょっと怖いですよね。あれをリアルだと思っちゃったら大変。それはガンダムだけではなくて、僕が作っている『マクロス』も同じです。