自民党の「文化芸術懇話会」で、報道の自由を抑圧しようという話題が出された。その出席者にインタビューしたところ、とんでもない発言が出てきたという。
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=121783
鬼木誠氏(衆院福岡2区)は「人の発言だから、ちょっと控えます」と答えた。一方で「沖縄の2紙がひどいとは思う」と話し「実際に読んで検証していないので、あくまでもイメージですよ」と付け加えた。
掲載されているのは沖縄タイムスだが、共同通信の配信記事だ。さんざん懇話会を批判された後でこれだから、深刻さを自覚していないことがよくわかる。
ちなみに、沖縄2紙をつぶそうと懇話会で発言した百田尚樹元NHK経営委員からして、きちんと読んでいないことを釈明で明かしていた。
http://www.asahi.com/articles/ASH6V5JXVH6VUHBI028.html
出席者の誰かが「沖縄の人やメディアの意識はやっかいだ」と言ったので、それに答える形で「やっかいやなあ、(沖縄の二つの地元紙は)つぶさんとなあ」とは言った。
地元紙はほとんど読まないし、自分の悪口ばっかり書くからきらいだが、本当に潰さないといけないとまで思っていない。
自民党は、国際情報検討委員会の原田義昭委員長も、国際連合の報告書を批判しながら読んでいなかったことがある。
朝日慰安婦報道を受け、自民党・国際情報検討委員会が政府に提出した「決議」についての荻上チキさんのつぶやき(20140925) - Togetter
ツイートしているのは、原田委員長を呼んだTBSラジオのメインパーソナリティ。
クマラスワミ報告書が吉田清治証言のみに依拠しているというのは、実際に読めば明らかに嘘とわかる*1。
つい最近に安倍晋三首相も、ポツダム宣言をつまびらかには読んでいないと答弁した。
2015 とくほう・特報/安倍首相の「ポツダム宣言読んでない」/党首討論 国内外に衝撃/“世界との関係ご破算”の深刻さ
安倍首相が志位氏の追及に対し、戦後日本の原点となった「ポツダム宣言」(1945年7月26日)を「つまびらかに読んでおらず、承知していない」と述べ、過去の日本の戦争を「間違った戦争」と認めなかったからです。
もともと安倍首相は戦後レジームからの脱却を訴えていたのだから、問われている部分を答えられるくらいの知見は持っておくべきだったろう。
もちろん自民党だけの問題ではなくて、大阪の橋下徹市長も吉見義明教授の主張を誤って引いた時、伝聞であって精読していないと回答したことがある。
吉見義明教授の「質問」と、橋下徹市長の「逃亡」と - 法華狼の日記
桜内議員について、維新の会としての見解なのかを問われて、はっきりと否定。自分の釈明会見に補佐として同席させ、冒頭で説明させながら制止しなかったのに、ここでも責任は全て桜内議員へ負わせた。絵に描いたようなトカゲのシッポ切りだ。
しかも責任転嫁だけでは不十分だと思ったのか、吉見教授の著作を精読していないと明言した。しかし先述したように、質問状の要点は昨年に吉見教授の主張をねじまげたことにある。つまり、『WiLL』のような信頼性の低い雑誌から孫引きし、本人から訂正が求められても撤回や謝罪をしなかったことについて、やはり著作を精読していなかったと、ここで橋下市長は語るに落ちた。
伝聞にもとづいていたと謝れば良かったのに、精読していないから他の人と議論してほしいという。
個人的な考えとして、読む気が起きないと批判することも、批判的な予想をおこなうことも自由だとは思っている。同時に、そうした想像による批判は、強い反論が来ることを覚悟すべきだとも思っている。
しかしどうやら、読まずに批判すれば反論を受けつけずにすむと考える人々は少なくないらしい。「無責任」とは、責任から逃げているという意味であって、責任をとらずにすむという意味ではないのだが。