敵は、アメリカへの復讐心を持つ兄弟。アメリカの政治介入で祖国が軍事行動をとりやめた時、父親が切り捨てられたことで、アメリカを逆恨みしている。
アメリカ大統領の娘を人質したが、主人公達の活躍で奪還される。そこで、主人公の仲間と毒ガス兵器をトレーラーに乗せ、アメリカ東海岸へさしむけた。
いかにも西澤晋コンテ演出回らしく、精緻かつ映画的なレイアウトで、ハリウッド映画のような物語が展開される……
次回予告では大統領の娘がピックアップされていた。たしかにアイドル活動も行うセレブレティとして自尊心の高い言動が印象的ではあった。しかしそれよりも、父親であるハミルトン大統領のキャラクターがいい。
主人公の仲間、インターポールとして働いているがまだ未成年の少年が人質にされていると知りながら、毒ガス攻撃を防ぐため攻撃することを決断し、最後までひよらない。娘に対しては、金と命ではなく、過去の命と未来の命を比較する論理でもって、似たような事件が未来に起きた場合に最も良い選択をすると説明する。ホワイトハウスで被害や世論の動きについての報告を受けていき*1、報告に対して事件後の政権交代を視野に入れた発言をしたり*2、ある種の大局観を持っていることをうかがわせる。トレーラー攻撃まで1時間の猶予があると主人公側に伝えたり、ところどころで人間味を感じさせつつも、いかにもアメリカ大統領らしいキャラクターとして完成されていた。
一方で主人公側も、事件解決後の会見でアメリカから勲章が贈られるはずだったが、“これが英雄なら英雄にはなりたくない”という意味の手紙だけを残して欠席する。同時刻で主人公の少年達がニューヨークを観光している様子を見せ、彼らが事件に対して何を思ったかは描かずに想像にまかせる。
アメリカの外交をそれらしく描き、正面からは否定しなかった上で、主人公の態度で留保をつける。1993年の子供向けTVアニメで、こういう物語が展開されていたことに、良い意味で感心した。