法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』のび太航空へようこそ/神さまごっこ

前後とも、ほぼ原作に忠実なアニメ化。しかし映像化における工夫が足りない。
何より、作画が良くない方向で粗い。前々回の誕生日SPと来年の映画へ制作リソースを吸いとられたためか。


のび太航空へようこそ」では、のび太が飛行士になる夢をかなえたいため、てっとり早く人力の三輪飛行機を出してもらう。そこで自信をつけて、てづくりな航空会社を始める。
原作でよくある、秘密道具で商売をするパターン。操縦方法の細かい描写や、飛行機ごっこで管制塔まで用意するディテールの細かさで、航空会社の日々を子供の等身大に置きかえたところが魅力だった。しかし今回のアニメ化では、作画の弱さが足をひっぱる。
操縦方法を学ぶ前半まではコンテも作画もダイナミックで悪くないが、航空会社を始めてからは平面的。原作そのままの構図が目立ち、終盤のジャイアン暴走が映えない。コンテ担当は『ストライク・ザ・ブラッド』の山本秀世監督。どうやら現在はアニメ会社M.S.Cとのつながりが深いらしく、前半の作画等でグロス請けしたゆえの登板だろう。
ディテールの甘さは、ジャイアンによるハイジャック展開そのものにもある。日航機羽田沖墜落事故から引用した台詞は不謹慎な時事ネタゆえかなくなり、のび太は機上で尿意をもよおすだけで墜落後に小便するわけでもない。人力飛行機なのに機長が席をたつという墜落必至の描写がなくなったので、オチの絵面だけ原作そのままでも違和感あるだけ。これならハイジャック展開は別の有名事件から引用して、物語の総合的な面白味を維持してほしかった。


「神さまごっこ」では、のび太が願いごとを聞いてあげる秘密道具を身につけ、純粋な善意から人々を救おうとする。しかしなぜか災難ばかりふりかかってくる。
のび太が秘密道具で活動をはじめるところから、スネ夫が過大な願いを口にしたり、ジャイアンが母親に追われたり、前半と展開がよく似ている。もともと物語パターンが固定化したころの原作であるためか。
後半だけ見れば普通の出来だが、前半との変化が少ないため面白味が感じられない。いっそ前半と連続したストーリーにしても良かったのではないかと思うが、脚本家も演出家も下請け会社も異なっているので、そうした工夫も難しかったのだろう。
コンテはパクキョンスン。キャラクターとカメラの距離感や、あまりダイナミックさを描かない映像など、リニューアル前の雰囲気がただよっていた。