法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ジャイアンの子守歌/おれさまをグレードアップ

ジャイアン誕生日!特別企画!」と題して、ジャイアンが主軸となったエピソードを放映。


ジャイアンの子守歌」は、いつの間にかジャイアンのそばに現れた謎の赤ん坊をめぐって、必死に周囲があやそうとする。しかし赤ん坊に水分をとらせる時に間違えて……
小林英造脚本、五月女誠子コンテによるアニメオリジナルストーリー。前半は秘密道具がほとんど関係なく、古典的な人情ドラマを子供たちの社会で展開する。
全体として絵作りがいい。それもただ作画が精緻だったり構図がこっているだけでなく、台詞で説明できない赤ん坊を動かしつづけて、重要な小道具をさりげなく映像で印象づけて、物語を支えている。特に、ティッシュペーパーを画面のすみでスネ夫が起こす地味な動作がいい。後半の大騒動の、文字通りの橋渡しになることを印象づける。その橋渡し自体が終盤のための印象づけとミスディレクションをかねている技巧もいい。
コエカタマリンによる後半の大騒動も、ありそうでなかった秘密道具のトラブルとしておもしろい。日常風景に不思議な物体が混じるコントラストが楽しいし、それを手がかりに赤ん坊を追っていくサスペンスの小道具としても活用される。世界崩壊のイメージシーンもこの作品では珍しい情景で、実際に劇中で起きているかのように錯覚する緻密さもあって楽しい。


「おれさまをグレードアップ」は、吹きつけた対象を1時間だけグレードアップする秘密道具が登場。それを使ってのび太は漫画を楽しもうとするが、やがて調子に乗って……
秘密道具こそアニメオリジナル中編「のび太の遠足サバイバル」*1で使われたが、原作短編そのもののアニメ化は2005年以降は初。高橋敦史コンテで、そつなく原作の魅力をアニメでふくらませていた。のび太が秘密道具を自分の足にふりかけてジャイアンをかわす場面のアクションがこぎみよい。
オチも展開そのものは原作通りだが、宇宙ロケットを思わせる描写で、バカバカしさをきわめた感動があった。しかしジャイアンの誕生日回に映像化するのがこのエピソードでいいのか?