法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ONE PIECE〝3D2Y〟 エースの死を越えて! ルフィ仲間との誓い』

一大決戦において主人公ルフィは兄エースを失った。無力を痛感したルフィは、いったん海賊団を解散し、力をためて2年後に合流することを誓う。その合流するまでの空白の時期、脱獄したワールド海賊団とルフィの戦いがあった。
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2014/140708-271.html
3日ではなく2年という意味で、タイトルの「3D」は×印で消されている。

15周年特別作品として、土曜プレミアム枠で2週間前の8月30日に放映されたスペシャルアニメ。ワールド海賊団のデザインは原作者の書きおろし*1。原作にもTVアニメオリジナルでも描かれなかった時期の物語化だが、そう違和感なく楽しめた。


外伝での敵を強くしすぎると、それを倒すことで本編の強さ描写と齟齬を感じさせがち。しかし今回の敵は世界征服を目指したものの捕まり、年老いて時代遅れの存在になっている。敵味方を恐れさせた超巨大な大砲による砲撃も、ワールドが敵視していた王下七武海の一員ホークが、たった一人で防いでしまった。まだ「覇気」をうまく使えないルフィひとりで団長に押し勝っても、見ていて不思議ではない。
敵の強さを適度に調整することで、登場人物数を少なく抑えられたのも良かった。前回のスペシャルでは、長大なエピソードを無理やり2時間枠に押しこめて、物語として厳しいものがあった*2。それが今回はルフィが仲間とはなれていることもあり、協力するのは王下七武海の一員ボアひとりだけ。かつて因縁があった別の海賊団と呉越同舟的に協力しながら、海軍がワールド海賊団を壊滅させるまでのタイムリミット内で戦わなければならず、目的が明確で展開に迷いがない。
失った兄を信じつづけるルフィと、助けてくれた兄を信じられないワールド。登場人物の少なさは、構図のわかりやすさにもつながっている。壮大にすぎないテーマを過不足なく描くことができていた。


冒頭でのエースを失った戦いだけは、原作の見せ場が連続するだけで工夫を感じなかったが、本編で顔を出さないキャラクターの顔見世サービスと思えば許せる。普段のTVアニメが遅々として進まないこともあって、娯楽作品として時間いっぱい楽しめた。
作画もスペシャルらしく申し分なし。たっぷりの枚数を使って、画面せましと大勢のキャラクターが暴れまわる。作画監督は多めだが、不統一が気にかかるほどではない。むしろエースの死で描線をふるわせる技法を使ったり、アクションで激しく崩したり、アニメーターごとの作画スタイルの変化を楽しめた。