法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ワンピース エピソード オブ 東の海〜ルフィと4人の仲間の大冒険!!〜』

グランドラインに突入しようとするルフィたち5人。酒樽に片足を乗せて、それぞれの決意を宣言。そしてその決意をめぐる5人のエピソードが描かれていく。


2017年8月26日に土曜プレミアム枠放映された、原作20周年記念SP。原作の序盤でメインだった5人のオムニバスストーリーとして、冒険のはじまりを再映像化した。
土曜プレミアム『ワンピース エピソード オブ 東の海(イーストブルー)~ルフィと4人の仲間の大冒険!!~』 - とれたてフジテレビ
東映出身ながら過去作品に参加せず現在フリーの大塚隆史が監督だが、近年の劇場版から続いて佐藤雅将キャラクターデザインらが参加しており、見ていて違和感はない。


内容としてはTVアニメ序盤よりも原作に忠実なくらいで、テンポも早すぎず遅すぎず。5人以外のメインキャラクターを無理に登場させるようなこともせず、原作扉絵での外伝的な情景をエンドロールで見せるのみ。
ここ最近のSPによるリメイクは映像化するエピソードが長すぎて、話運びが拙速に感じられることが多かったが*1、今回は問題を感じなかった。時系列を前後させてまで、ひとりひとりのエピソードとして再構成した判断が良かったのだろう。あくまで主役をつとめるキャラクターのドラマと思えば、心情によりそえる構成になっている。
「夏スペシャルDVD&Blu-ray発売決定!放送後だから話せるとっておきのエピソードを大塚監督から聞き出したぞ」の巻 | ウソップの、これはホントだ! | スペシャル | ONE PIECE.com(ワンピース ドットコム)

大塚:2時間という時間の中で変化をつけるため、5人分のエピソードをオムニバス形式にして、それぞれ別の作画監督に担当してもらいました。また、シナリオを書く際、メインのキャラクターに関係のある部分は絶対に外さないように意識しました。例えば原作のウソップ編では、仲間を大事にしないキャプテン・クロに対してルフィが怒るシーンがありますが、今回はあえて描きませんでした。ルフィとクロの信念がぶつかり合うカッコいいシーンではありますが、ウソップの活躍ではないからです。

必ずしもエピソードごとの設定はくわしく説明されず、たとえば「エピソードオブサンジ」ではギンがいきなりサンジに料理を食べさせてもらっている場面が導入で、「エピソードオブナミ」はナミがルフィたちを裏切った場面から始まるが、各要素のドラマにおける位置づけが明瞭だから、問題なく成立している。
それでも原作からして起承転結のはっきりしたエピソードだったおかげか、宇田鋼之介コンテの「エピソードオブウソップ」が最もまとまっていた。主役たるウソップのおかれた状況と、その存在が仲間として承認されるまでが、過不足なく描かれた。


作画も驚くほど良好なわけではないが、安定して全体をブラッシュアップして印象は良い。エピソードごとに演出作画スタッフも交代することで、ひとつながりの物語で絵柄がぶれて実質より作画が悪く見える問題を回避している。東映らしい制限の多さにアクションがふるわなかった初期TVアニメと比べて、エピソードごとの見せ場でしっかりアクションを展開しているのも強い。
特に大塚健コンテの「エピソードオブゾロ」のミホークとゾロの剣戟と、大塚隆史コンテ演出の「エピソードオブナミ」でルフィが城を崩壊させるくだりの作画が目を引いた。