法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

朝日検証以降、マスメディアもインターネットも朝日批判するそぶりでデマを流す競争をしている件について

内容も朝日検証とてらしあわせるだけで明らかにデマとわかるようなものばかり。
検証後の反応を受けた朝日記事のまとめに対しても、同じように重ねてデマが流されている。
慰安婦問題 核心は変わらず:朝日新聞デジタル
そのひとつとして毎日新聞社説をとりあげよう。
http://mainichi.jp/select/news/20140829k0000m040109000c.html

現役の韓国政府関係者の見方として、吉田氏の証言は「韓国では一般的に知られているとは言えない」と伝えた。

 しかし、96年に国連人権委員会に提出された「クマラスワミ報告」は、強制連行の証拠として吉田氏の証言に言及し、日本政府に国家賠償を求めた。今回の記事はこうした事実には触れていない。

まず、現在の韓国で一般的に知られていないことと、十年以上前の国連報告書で言及されていることに、論理的な矛盾などない。
そして朝日記事の記述は、ただ吉田清治証言が知られていないという話ではない。「■韓国、元慰安婦証言を重視」という章で記述されていることからわかるように、ひとつの加害証言よりも多くの被害証言が重視されているという話だ。

 現役の韓国政府関係者によると、朝日新聞の特集記事が出た後、吉田氏は何と証言したのかとの問い合わせが韓国人記者から寄せられるなど、証言そのものは韓国では一般的に知られているとは言えないという。

 80年代半ばから90年代前半にかけて、韓国外交当局で日韓関係を担当した元外交官は「韓国政府が慰安婦問題の強制性の最大の根拠としてきたのは元慰安婦の生の証言であり、それは今も変わっていない。吉田氏の証言が問題の本質ではありえない」と話す。

クマラスワミ報告書にしても、吉田証言への言及で知られているが、あくまで補足情報にとどまる。元慰安婦から聞きとった情報が記述の大半をしめ、まさしく「核心」をなしている。
クマラスワミ報告書と吉田清治証言と性奴隷認定の関係をめぐるデマ - 法華狼の日記
クマラスワミ報告書の存在は、むしろ朝日検証のまとめ記事が正しい証拠ともいえるだろう。逆に毎日新聞社説は、クマラスワミ報告書に吉田証言への歴史学者からの否定意見も掲載されていることをふれていない。


読売新聞記事は、さらにひどいものだ。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/ianfu/20140828-OYT8T50022.html

 朝日は2014年8月5日の特集記事「慰安婦問題を考える」で、吉田証言を虚偽と認め、記事を取り消した。「強制連行」の最大の根拠が崩れた。

これは朝日検証の特集記事だけで反論できる。より広い範囲を指してきた「強制連行」を否定する証拠にはならない。
強制連行 自由を奪われた強制性あった:朝日新聞デジタル
私個人も、吉田証言より古い新聞記事で広い範囲を指して使われていたことを確認したことがある。
慰安婦を騙して集めたことを、1975年の新聞記事は「強制連行」と表現していた - 法華狼の日記
国会議事録でも、吉田証言を否定する秦郁彦調査より前から、ずっと広い意味で使うべきという問題意識が記録されている。
従軍慰安婦の強制連行を狭義にとどめない問題意識は、1990年以前から確実に存在していた - 法華狼の日記
そもそも吉田証言とは、朝鮮半島の一部地域での、官憲の指示による募集段階での強制があったという、きわめて限定された範囲での加害証言だ。それが除外されることで、従軍慰安婦問題の全体像にどれほどの変化をもたらすのか、少しは想像してみるといい。
ちなみに歴史学においては、多くの被害証言が集まるようになった1990年初頭から証拠として重視されないまま研究が進んでおり、証拠から除外されて長い。そこで朝日新聞よりも歴史学における見解を重視するのであれば、それはそれで良いのだが。