法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

外国人のふりをして日本の問題を免罪する主張に、またまたあの人物がかかわっていた

ニューヨークタイムズ東京支局長のヘンリー・ストークス氏が、連合軍側の視点から逃れて第二次世界大戦を見つめたという書籍を出し、ベストセラーになった。
しかし南京事件を否定するような部分は、翻訳者が勝手に自説をつけくわえていたことが明らかになった。
http://www.47news.jp/CN/201405/CN2014050801001804.html

 米ニューヨーク・タイムズ紙の元東京支局長が、ベストセラーの自著「英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄」(祥伝社新書)で、日本軍による「『南京大虐殺』はなかった」と主張した部分は、著者に無断で翻訳者が書き加えていたことが8日明らかになった。

問題の著書は昨年末に出版されており、Amazonレビューを見ると2日前にも星4つの高評価がついていた。

英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄(祥伝社新書)

英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄(祥伝社新書)

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その手の本をいくつか読んでいたら「あ、これどこかで聞いたことがある」と思える内容も多くあります。

私の浅はかな考えから言わせてもらうと、
この本に価値があるのは

・「戦勝国」とされる側の国の人が考えて書かれた本であること

まず、この点が一番大きいです。著者のヘンリー・スコット・ストークスさんには是非とも英語版の本を日本国外でも発売してもらいたいものです。

真相を知って読むと残酷なレビューである。


この元支局長は2012年に加瀬英明氏と共著を出している。

なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けたのか(祥伝社新書287)

なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けたのか(祥伝社新書287)

別の報道記事で、この加瀬氏が2013年の翻訳改竄にかかわっていることが報じられた。
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20140508-1297902.html

 ヘンリー・ストークス氏の著書に無断で加筆した翻訳者の藤田裕行氏は、南京大虐殺従軍慰安婦問題などの「ゆがめられた歴史を正す」ことを目的とする保守派団体「史実を世界に発信する会」の中心メンバーだ。
 藤田氏らは、南京大虐殺従軍慰安婦問題は「特定アジア諸国による悪意ある反日宣伝」で、日本の国益が損なわれていると主張。英文のニュースレターをウェブ上などで発信している。藤田氏によると、同書には同会代表の加瀬英明氏も深く関与した。
 藤田氏は、自分の著作でストークス氏の主張を紹介するのではなく、あえてストークス氏の著作という体裁をとった理由を「外国特派員がこういう内容について話をしたら面白いと思った」と説明。「私が書いたら『あれは右翼だ』と言われます」と語った。

たしかにAmazonレビューを見るかぎり外国人の立場を借りただけの意味はあったようだ。
そして記事内で指摘されているように、関与したという加瀬氏は以前にも同じような問題を起こしていた。

 加瀬氏は、1993年に出版され日本の韓国植民地支配を正当化したベストセラー「醜い韓国人」(光文社)をめぐり95年、韓国人著者の原稿に大幅な加筆修正を加えたとして「真の著者は加瀬氏」と批判され「文章を手直しした程度だ」と反論した。


ところで、ニューヨークタイムズ元東京支局長といえば、ノリミツ・オオニシ氏という人物がいる。
日本の右傾化を批判するような記事を書いていためインターネットで嫌悪され、Wikipediaでは下記のような記述が留保なくされている。
wikipedia:ノリミツ・オオニシ

日本の保守派にはオオニシは元帰化日本人であると考えている者もいる。高山正之は以下の文を週刊新潮に寄稿した[5]。

「もっと問題なのは同紙東京特派員N・オオニシのようにマスコミ界にも帰化人がいて、日本人の名を使って日本を非難する。こんな賢しい輩を排除するには米国と同じにその出自を明らかにし、発言させるべきではないか。」

5.^ 高山正之「変幻自在 207: 似非日本人」、『週刊新潮』第2554号、新潮社、2006年6月13日、 p.146、 ISSN 0488-7484。

そもそも「帰化人」に問題があるかのような主張からして誤っているが、こうした出自を偽ることへの批判が加瀬氏に向けられることはもちろんない。
加瀬英明 高山正之」で検索してみると、一方が監修する著書へ寄稿していたり、同じイベントでパネリストをつとめていることがわかる。


そして加瀬氏は現在でも「排除」されることなく、文筆活動と政治活動を続けられている。
たとえば「体罰は教育」*1と主張する団体「体罰の会」の会長となり、臆面なく下記のように主張していた。
taibatsu.com - このウェブサイトは販売用です! - 体罰 教育 学校 学校教育 学校教育法 進歩 役員 実施 リソースおよび情報

私もそうだったが、少年は動物に近いから仕つけなければならない。子供が正しくない行為を働いた時には、体罰を与えることが必要となる。

いい替えれば、子供には体罰を受ける権利がある。いっさいの体罰を禁じることは、日本の教育を荒廃させるだけではなく、子供の人権と将来を奪うものである。

米国に建立された慰安婦像を撤去するよう求める団体「歴史の真実を求める世界連合会」でも、共同代表をつとめている。
グレンデール市に見る、日韓の対立ではなく人権の確立としての従軍慰安婦問題 - 法華狼の日記

「歴史の真実を求める世界連合会」は公式サイトも持っている。在米日本人団体が中核にいる運動のはずなのに、日本語ページしか存在しないところが興味深い。

「発起人」の説明は下記のとおり、在米ですらない日本人が多い。

日本の組織の発起人には、この分野で著名な人材が参加しています。外交評論家の加瀬英明をはじめとして、歴史教科書の改訂に尽力した藤岡信勝、なでしこアクションの山本優美子、在米の元南カリフォルニア大学教授で日本再生研究会(南加)会長の目良浩一、貿易商の水島一郎、旅行業の高橋光郎、デザイナーの堀江節、ブログで知られている内藤喬生、実業家の團晨喜が名を連ね、加瀬英明と目良浩一が共同で代表者になっています。

英語ページはドメインこそとっているが、今も「メンテナンスモード」で見られないままだ。
gahtus.org - このウェブサイトは販売用です! -&nbspgahtus リソースおよび情報

The Global Allicance for Histrical Truth -
メンテナンスモード

この「歴史の真実を求める世界連合会」に在米日本人が参加していることも事実だ。しかし情報発信の対象から考えて、やはり加瀬氏の活動らしく、国外運動のふりをして日本国内へ宣伝することを重視しているのだろう。

*1:http://taibatsu.com/index.htmlの趣意書より。ちなみにストークス氏の著書を翻訳したとされる藤田氏も発起人だった。http://taibatsu.com/m5.html