法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『アメイジング・スパイダーマン』

サム・ライミ監督によるシリーズ1作目からちょうど10年、2012年に公開された再映画化『スパイダーマン』を、金曜ロードSHOW!放映版で視聴。2時間半くらいに枠を延長していたので、本編はほとんどノーカットだろうと思う。
アメイジング・スパイダーマン - 金曜ロードSHOW!
いかにも最近のアクション大作らしく3D撮影されているそうで、立体視することを前提にしたようなアクション場面は質感が前後と比べて浮いていて、ところどころ気にかかった。
とはいえ、水流のある排水溝での狭苦しく薄暗い死闘と、白昼に校舎を破壊しながら戦う立体的な戦闘とで、かなりシチュエーションに幅を作っていたのは悪くない。特に後者の校舎での戦いは、邦画でも洋画でも滅多に見られない情景で、なかなか新鮮味があって良かった。


他には、あまり時期のあいていないサム・ライミ版と差別化しようとして、あえて逆を行こうとしているように感じた。
アクションでは、3DCGらしいカメラワークで白昼のビル街を移動していたところを、今回は夜景を主観視点で移動する場面が目立つ。格闘戦ではスローモーションを抑制しており、俳優の身体能力を見せるかのようにパルクールのような殺陣を披露する。
サム・ライミ版では生身で糸を飛ばしていたスパイダーマンがメカの外装を着込んだ敵と戦っていたのに対し、この作品では機械で糸を飛ばすスパイダーマンが遺伝子操作で巨大化し再生する敵と戦う。


しかし差別化が必要だとは思うものの、物語面では裏目に出ていると感じた。
サム・ライミ版では正体を隠匿することが重視され、特に2作目では正体を一般人に知られたくないことがドラマにおいて最高潮を迎えたのに対して、この作品では素顔をあっさり見せる。緊急避難で幼児に見せるまではともかく、ヒロインにも敵にも警察にまでも正体をすぐ知られてしまう。
正体を次々に見せることもふくめて、展開が早いというより、物語にタメがないという問題を感じた。たいした過程は描かれず、主人公が障害をあっさり乗りこえてしまう。かといって主人公がひょうひょうとヒーローになるわけではなくて、場面ごとでは迷ったり誤ったりする。まるでダイジェストを見ているような気分になった。
また、主人公が最大の失敗をおかした強盗犯との出会いは、今回では物語として結末をつけられていない。強盗犯を見つけようとして暴走気味に自警団活動をおこない、その身勝手な行動が警察の思惑と衝突していたことを知り、かといって明確に手を引くことを決める場面もなく、警察との対立や怪物化した敵との戦いへと移行する。てっきり敵を倒した後に、強盗犯を殺さず警察へ突き出す場面が来るとばかり予想して、次回作へ持ちこすかのような描写に驚いた。