いや、先日のオリンピックにまつわる失言報道で、TBSラジオの書き起こし全文を読んだ感想なのだが。
森喜朗 元総理・東京五輪組織委員会会長の発言 書き起こし - 荻上チキ・Session-22
あともう皆ダメで、せめて浅田さんが出れば3回転半をすると、3回転半をする女性がいないというので、彼女が出て3回転半をすると、ひょっとすると3位になれるかもしれないという淡い気持ちでね。浅田さんを出したんですが。また見事にひっくり返っちゃいまして、結局、団体戦も惨敗を喫したという。
その傷が浅田さんに残ってたとしたら、ものすごくかわいそうな話なんですね。団体戦負けるとわかってる、団体戦に何も浅田さんを出して、恥かかせることなかったと思うんですよね。
浅田真央に対するコメントは、当初から一部で推測されていたとおり、なぐさめる気持ちがからまわりした感じではある。団体戦に出させるべきではなかったという自省を読むことも可能だろう。
それでも、やはり公開された場所でいうべき言葉ではない。明らかな問題として、浅田を立てるために、「もう皆ダメで」と他を相対的に落としてしまっている。
誰かを落として笑いをとる時は、最後に自分を大きく落とすのが定石だ。それならば他人を落としたという印象が相対的に弱まる。
しかし途中を見ると、自分に問題点がないかのような自画自賛。
私がオリンピック組織委員会の会長になったというと、なんかつっついてやろうと思うけど、つっつく材料がないから一番先に言うのは、「あなたオリンピックまで生きてるんですか?」といわれる。(会場笑い)
さらに書き起こしの最後には、過去に批判された発言についての自己弁護。
仏様も、お釈迦様もキリスト様もみんな大事にしなきゃだめだよと言って、だけど、日本は神主さんが沢山いたから神様の国ですよねって言ったら、森総理は「神の国」といってと、もう袋叩きにあうです。ああいうこと書いた人みんな天罰が当たると私は思ってます。(会場笑い)私は逆に神様のお守りがあったからここまで来れたんだと思ってますが。
きっと自分が上にいるという立場からしか他人を笑いものにできないのだろう。あくまで想像だが、このような人物は自身に軽口が向けられた場合は激怒しそうだ。
そして多くの人々が批判しているように、浅田に言及した以外の発言がことごとくストレートにひどい。ロシアのサービス不足批判にはじまり、パラリンピックの軽視、帰化云々の事実誤認、あのNHK会長をマスコミから擁護……
特定の客層が相手の講演ならば、「本音」をぶっちゃけたと感じられて喜ばれた可能性はあるだろう。書き起こしでも、何度か会場を笑わせていたことがわかる。だからこそ、このような「真意」を持っている人物が、東京五輪会長のような立場でオリンピックにたずさわってはなるまい。
そもそも『第262回「毎日・世論フォーラム」』なのだから、広く公開されることが前提の講演ではないか。
さらに驚かされたのが、「裏方の大功労者」として持ち出した石原慎太郎元都知事の、オリンピック招致に失敗した後の言動。
石原さんはかんかんに怒って、帰りの飛行機の中で私に「もう二度とやらねーからなあんなもん」と。大体負けた理由がそのけしからんと。知事は偉ぶっていて、その握手をしない、ハグをしないと。冗談じゃない。知らない男となんで俺はホモでもねーのにハグしなきゃいけねんだよ。さらにこう石原さん言ってました。本当に悔しかったんだと思います。あの方、わがままな方ですから。
森会長の失言を延々と読んできた印象がふっとぶような大失言。ある意味でソチオリンピックを象徴するような直球のホモフォビア。
ここまででも許しをこいたくなるほど軽口ぶりに圧倒されていたのに、言葉だけで語られる存在しない人物がはるかに凶悪で強大という、何ともいえない凄まじさ。