法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

請求の濫用への批判が、あたかも請求する権利の否定のように解釈されていて驚いている

まず参照しておきたいのが、数年前に「余命三年時事日記」が扇動した懲戒請求と、その濫用に抗するための裁判だ。
余命ブログの懲戒請求裁判、判決を分析 - 弁護士ドットコム

横浜地裁判決では、懲戒請求制度の意義にも言及。弁護士への懲戒請求は誰でも可能であること定めた弁護士法の条文について「請求者に対して恣意的な請求を許容したり、広く免責を与えたりする趣旨の規定ではないことは明らか」としていて、「国民の権利」(横浜地裁での被告)との主張を退けた。

もちろん何もかも同じではないが、権利として認められた手段というだけででは、濫用とされない充分条件ではない。


支援団体Colaboへの誹謗中傷を受けた弁護団の記者会見に対して、広く認められた監査請求が制限されたかのように反発されている*1
[B! 仁藤夢乃] Colaboへのネット上の攻撃深刻/誹謗中傷加担やめて/仁藤さんの弁護団

id:BIFF 誰であれ誹謗中傷はダメ。ただColaboには現時点で完全に的外れと言いきれない疑義が複数あるので、弁護団も引き続き真摯に情報公開をして欲しい。。あとオンブズマンでなければ情報開示請求NGなんて放言は論外。。

id:yujimi-daifuku-2222 開示請求が攻撃? あなたたちがモリカケ、桜や五輪に纏わる不正会計を許さないとしてきたのは党派的な攻撃でしかなかった。そう自白したと取られても仕方ないお追陞記事は非常に残念ですね。

id:hatebnewone 会見で仁藤さんが暇空氏を監査請求や開示請求の濫用と批判したが、同席の弁護士集団は開示請求とかいっぱいしてる。太田弁護士はエコーニュースの人を付き纏いストーカーと中傷した。

id:deztecjp 「情報開示請求は暴力」とかの主張は、報じないんだな。お仲間がいうなら暴論もスルーかよ、とは思うが、妄言までうっかり支持しないだけの理性は残っている、と評価しておきたい。

id:Gragra これからは共産党関係者による開示請求はすべて「暴力」として扱ってもいいらしい。市民の「知る権利」を擁護し続けてきた共産党がまったく呆れ果てる。

id:wideangle 開示請求への非難、都議の原田某が先走っただけと思いたかったが……

id:confi 開示請求が個人攻撃とか安倍政権でも言わなかった


deztecjp氏のコメントにあるように、はてなブックマークされた記事は記者会見を要約しているだけで、監査請求への直接的な言及はない。
Colaboへのネット上の攻撃深刻/誹謗中傷加担やめて/仁藤さんの弁護団

 声明は、現在、Colaboおよびその代表理事である仁藤さんに対するデマ拡散、誹謗(ひぼう)中傷等インターネット上の攻撃が激化、深刻になっていると述べています。

 また、一時シェルターを中長期シェルターであると決めつけたり、保護女性全員が生活保護受給者であるとか、不正な生活保護受給を行っているなど、事実に反する断定も多いとしています。

誹謗中傷や不正確な情報の拡散を重視した筆致であり、監査請求が攻撃と同一視されたかのようにコメントする対象として適切とは思えない。
一方、記者会見の該当部分を書き起こした「まんぷく❤出羽守尾張守ウォッチャー@ForeignUtopia」氏のツイートも話題になっていたが。


colabo会見、神原弁護士
「市民オンブズマンがやってくるなら分かるが、(暇空茜氏がやっているのは)制度の濫用」

この発言は大問題だと思う。弁護士がこういうこと言って言いの?

はてなブックマークでは同調するコメントが多いが、すでに書き起こしとして不正確だという指摘もおこなわれている。
[B! 弁護士] まんぷく❤出羽守尾張守ウォッチャー on Twitter: "colabo会見、神原弁護士 「市民オンブズマンがやってくるなら分かるが、(暇空茜氏がやっているのは)制度の濫用」 ↑ この発言は大問題だと思う。弁護士がこういうこと言って言いの?"

id:metalmax 「市民オンブズマンとかそういった奴がやってるならまだわかるけど」って発言だけでもなかなか凄い。

id:duers またここでもデマ。「市民オンブズマンとかがやってるとかなら分かりますよ、そうじゃなくて要するに、嫌がらせ目的で入手したものをネットで公開する、こんなのは制度の濫用ですよ」会見動画の1:02:55あたりより

おそらく記者会見を批判している立場だろうmetalmax氏ですら、きちんと「とか」という表現をひろっていることに注目したい。辞書をひくまでもなく例示とわかるだろう。
kotobank.jp
ひとつ例示したことは、それ以外を制限することを意味しない。その例示の妥当性を論じることはできるとしても、BIFF氏のように「オンブズマンでなければ情報開示請求NG」と解釈することは、それこそ「論外」だろう。
まず弁護団は前例として懲戒請求の濫用に言及してから、攻撃目的が明らかな監査請求を批判しているのであって*2、市民オンブズマンは制度の目的にそった事例として言及されているだけ。
また、すべての監査請求が攻撃になると主張したわけではないのだから、yujimi-daifuku-2222氏のような監査請求を単純に攻撃と同一視するかのような表現も正確ではない。


ちなみに懲戒請求濫用に対する東京弁護士会の会長声明は、もっと明示的に懲戒の理由を制限していた。
当会会員に対する濫用的懲戒請求についての会長声明|東京弁護士会

当会のみならず各弁護士会が発した意見書や会長声明をめぐって、個々の会員が懲戒請求されることは、筋違いと言わざるを得ない。
 私たちが、各種意見書や会長声明を発するのは、弁護士が人権の擁護と社会正義の実現を使命としていることから、多数決原理の中で決まった立法政策であっても少数者の人権保障の観点から問題があると考える場合である。
 そのことが懲戒の理由になることはあり得ない。

先述のように同一の問題ではないが、きちんと弁護団へ反論したいなら参照しても良いだろう。

*1:id:nori__3氏の「歪曲、捏造と判断した根拠が無いのならただの妄言だし、情報開示請求者に対する誹謗でしょ。まぁそっちの人を全面支持するものではないが。」というコメントは、監査請求そのものを弁護団が制限したかのような表現ではなく、仮定を根拠にした独立した感想として理解はできるので、このエントリでは批判するつもりはない。

*2:不正追及が目的ではないことは過去に明かされていた。hokke-ookami.hatenablog.com