両作品とも荒々しさと繊細さという異なるベクトルで手描き作画の魅力をアピールしている作品だけに、かなり大胆な活用ぶりが面白い。
無機的なロボットや顔のうつらないモブキャラクターならまだしも、少女キャラクターで手描き作画から違和感なく移行している。
もちろん『キルラキル KILL la KILL』の第1話や第3話で使われることは予想できた。同じ今石洋之監督作品『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』でも3DCGがアクションで活用されていたし、その制作をになった3DCG制作会社サンジゲンが『ブラック★ロックシューター』のアクションを手がけた時に今石監督が協力した縁もある。逆にサンジゲン側も、手描きアニメの魅力を3DCGにとりいれようとしている会社だ。
しかし『機巧少女は傷つかない』第4話*1で活用された時は、薄暗いナイトシーンとはいえ違和感の少なさに驚かされた。制作しているLercheは、スタジオ雲雀から発展した会社らしい。スタジオ雲雀はTVアニメ『らいむいろ戦奇譚』で違和感のない3DCGアクションを2003年に展開したり、少女が主人公のSF『星の海のアムリ』を全編3DCGで制作したりしており、充分な技術の蓄積はあるのだろう。
ただ技術力があることと、その技術を使用するという判断の間には開きがある。今石監督もよしもときんじ監督もアニメーター出身で、どちらも絵の魅力にフェティッシュな快楽を求めている印象があった。よしもと監督が3DCGに対してどのような印象を持っているか、インタビューのたぐいが見つからず、よくわからない。
ただ、両監督の作品暦をながめていて、ガイナックスという接点があることに気づいた。よしもと監督はアートランド出身で、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』でアニメーターとしてデビュー。ガイナックスの処女作品『王立宇宙軍 オネアミスの翼』やOVA『トップをねらえ!』に参加している。
そして『超時空要塞マクロス』のアニメーターとして腕をふるい、ガイナックスの各作品で演出家としてステップアップをはたした庵野秀明監督も、映画『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破』 において3DCGモブキャラクターを大幅に導入。キャラクター的な印象の強い人型兵器も多くの場面で3DCGを活用していた。かといって、人型兵器の全カットを3DCGで構成したわけでもなく、カットごとに細かく使い分けている。
つまりキャラクター表現において、手描き作画と3DCGをシームレスに使う思想に、庵野監督という源流があるのではと思いついたわけだが……
……しかし結論を決めないままエントリを書き進めていって、「単に日本アニメの潮流として同時多発的に試みられているだけでは?」という疑問を自分でおぼえた。たとえば、あまり接点のないサンライズでもCM連動企画OVA『FREEDOM』から映画『いばらの王 King of Thorn』まで、手描き作画と3DCGキャラクターが混在する作品を制作する流れがあったりした。最近だとスタジオディーン制作の『キングダム』の一期目で試みられたりもしていた。
また、庵野監督が3DCGを活用した背景にミニチュア特撮への偏愛がよく指摘されるわけだが*2、『機巧少女は傷つかない』や『キルラキル KILL la KILL』にその志向性は感じられない。両作品に何らかの接点があるとしても、真面目に考えれば庵野監督の関係ではないだろう。
そこで何か別の流れがあるのかどうか各監督の発言をさがしたりしたのだが、それらしい情報を見つけることができなかった。とりあえず今回のエントリで結論は出さず、仮説を立てて崩していく途中経過として記録だけすることにする。
*1:コンテは第3話につづいて夕澄慶英が担当。ちなみに第3話で「空鍋」と評された表現は、先行作品を知らずにコンテ段階で改変したものだという。https://twitter.com/KA_Yuuzumi/status/394215781023494144
*2:http://johakyu.net/archives/2009/09/2009-09-10-001019.php