法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『銀河へキックオフ!!』雑多な感想

NHKで放映された、全39話の少年サッカーアニメ。原作はマンガやライトノベルではなく、川端裕人の小説。
東映をはなれた宇田鋼之介が監督し、山田隆司がシリーズ構成をつとめた。制作はハルフィルムメーカーの流れを組むTYOアニメーションズ
止め絵やバンクを多用しつつも、ちゃんと複数の人間がいりみだれるサッカーらしい映像を、ちゃんとアニメらしく描いてくれた。ただ実写をひきうつしたのではなく、身体のしなやかな動きなど、アニメとしてのデフォルメがされており、見ていて気持ちがいい。


物語についていうと、スポーツアニメとしては珍しいほど見ていてストレスのたまらない作品だった。特に、練習や試合といったスポーツそのものにかかわる描写で顕著だった。特訓の苦しさや敗北の痛みをドラマにしようとしていない。
むしろ主人公の敵となるのは、子供は子供らしくあるべきという固定観念や、勝利のために苦労しなければならないという旧弊思想だ。
チームの仲間集めには苦労したが、苦労しなければスポーツはできないというよりも、スポーツを軽く見ている親に理解を求めるという側面が強い。過去のスポーツアニメと違って、最初はサッカーが好きではなかったとか、親からサッカーを押しつけられて悩むとかいった、サッカーを悪いものとして描いたりはしなかった。
そしてブラインドサッカーが代表するように、子供も大人もスポーツをとおして社会の束縛から解放され、自己の身体を自由なものとして動かしていく。スポーツとは楽しいものだということを、全話をかけて描ききった。


ただ、さすがに主人公側にとって都合よく進みすぎていると感じたことも何度かあった。短い期間しかできない少年サッカーというということもあり、敗北をかかえて次の年にかけるという展開が難しい。原作が短くまとまった小説ということもあるだろうか。
ひとつの試合が長くても2話から3話で終わってしまうこともあり、敵対するチームの人間は1人か2人くらいしかキャラクターが立たない。せっかく良いキャラクターなのに、あまり何度もからむ余裕がなかった。ストレスのたまらなさは、良くも悪くもといったところか。


それから、ハンディキャップと特殊ルールを導入して、プロに子供が挑戦する企画「Jリーガーに挑戦」というミニコーナーも楽しいものだった。
最近の小学生のリフティング技術の高さが印象的で、全体としてはJリーガーが圧倒しつつも、たがいの能力を発揮する白熱した局面が多く見られた。