法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『必死剣 鳥刺し』

藤沢周平原作の時代劇。真面目一筋の主人公が、藩主の愛妾を白昼の城中で殺害した。その背景と顛末を描く。


GYAO!で配信していたのを視聴。今回の無料は1月16日いっぱいまで。
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00908/v12197/
町や村は、既存の映画村を使用。撮影はいいし、所作に隙はないが、大作映画という感じの作りではない。
たぶんチャンバラ映画の復権をねらった作品なのだろう。冒頭の愛妾殺害で驚かせつつ、全ての要素がクライマックスの大立ち回りへ集約していく。それでいて安易に台詞で心情を語らず、物語の流れで緊張の高まりを描いていった。作品キャッチコピーの「運命を斬り開くまで」というフレーズも、殺陣を最重視したアニメ時代劇映画『ストレンヂア 無皇刃譚』のキャッチコピーに通じる。
いったん凄い殺陣を見せた後、それを超える戦いを見せるという順序で、チャンバラ映画としての満足度は高い。戦いにいたる展開と、勝敗の分岐点を見せる描写は、同じ藤沢原作映画『たそがれ清兵衛』の結末で感じた不満をぬぐいさってくれた。わずかな不満をいうと、もっと主人公が戦いで致命傷をさけつづけていれば、「必死剣」が発動した時の驚きが増しただろう。


最後まで主人公は汚れ仕事を押しつけられ、殺した相手も結果として正しかったのかという後味の悪さが残る。だからこそ「必死剣」の発動が際立った。
また、愛妾が政治に口を出したため藩政に問題が起きたと見せていく前半は、古典的な女性嫌悪に感じられた。時代劇なので、当時の人々の心情を描いていると思って許せたが。しかし、一揆が不成功で終わる痛みなどを描いた後、愛妾が根本の問題ではなかったと明らかになっていく。その慎重さが良かった。