法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ウルトラミキサー/突撃!ハクションバスターズ

原作初期のカオス回をアニメ化した前半と、アニメオリジナルでそれ以上にカオスな後半と。


Aパートは、冷蔵庫とトイレを合体させるあたりもふくめて全般的に原作通り。
アニメオリジナルはジャイアン自転車と電気バリカンドライヤーが登場したことと、おやつがドラ焼き一個な理由として前半の出来事にママが怒っているらしい様子がうかがえたことくらい。前者はレギュラーキャラの登場を増やしたり禁煙のご時勢に従ってライターから変更したというだけだが、後者は物語の整合性というかママというキャラクターが作中に息づいている感じがあって良かったな。
オチも原作通りのビジュアルだからこそ笑える。くわえて、のびエモンの頭髪がドラえもんの青色を受けついでいる解釈が面白かった。以前にアニメ化された回でどうだったのかは記憶にないが、原作ではのび太と同じ黒髪だったはず。
http://www.tv-asahi.co.jp/doraemon/contents/topics/backnumber/0302/top.html


Bパートは、『ゴーストバスターズ』を思わせる格好で『ミクロの決死圏』をやる物語。しかしSF考証面では色々と粗雑で、見ていて整合性のなさが気になった。原作での、のび太が単身で乗り込む物語のプリミティブな面白味に負けている。
たとえば、体内へ呼びかけても反応がないからと大声を出すまではわかる。しかし大声で困ったのび太たちの様子は理解できるという描写は、小さいサイズになっているために反応が聞こえなかったらしき直前の描写と感覚的にも整合せず、ギャグではあるが違和感が大きすぎる。体外と通信できる秘密道具を出す1シーンだけあれば充分なのに、そういう細部へのこだわりが見られない。
ウイルスを倒す描写でも、等身大のまま使っていたウイルスを吸い込む秘密道具「ウイルスバキューム」が極小サイズになっても利用できるのか、ジャイアンごと極小化した風邪ウイルス*1が相対的に巨大化したウイルスを倒す機序が想像困難だったり、極小化したことが風景の変化としてしか作用していない。
面白かったのは、ひさびさに登場したドラミの、優等生のようでじゃじゃ馬な性格が楽しめたところ。そして病気になって言動がはてしなくおかしくなったドラえもんの様子。受け答えの絶妙なすれ違いぶりや、水を求めてナチュラルに洗面器の水を飲み干す様子が、なんとも嫌リアルなアレで大変よろしかった。
あと、作画枚数を使ったアニメーションは悪くなかったかな。作画そのものはそんなに良くないんだけど、使いまわしにたよらない洪水描写や、うごめいている無数のウイルス*2ドラえもんの狂騒は見ていて楽しかった。

*1:菌と表現すれば自然だったが、「風邪」を病気の種類ではなく症状と解釈すれば間違っているわけではない。

*2:中盤で巨大な球体になってピンボールのように転がりまわり、のび太の射撃で破裂する描写は、『輪るピングドラム』を思い出した。