先日、下のエントリに対して、従軍慰安婦を「保護」していた当時の条件が書き込まれた。
そんなところで「散々指摘」されたという話をされても、なんというか困るよ - 法華狼の日記
通りすがりの人 2012/01/17 20:12
ここのブログ主がソースとしたこの京大の永井って人、資料のタイトルだけで詳細を載せていないものがかなりあるんだけど、なぜ詳細を書かないかというと詳細書くと印象がガラっと変わってしまうからなんだよね。
条 件
一、契約年限 満二ヶ年
一、前借金 五百円ヨリ千円迄
但シ、前借金ノ内二割ヲ控除シ、身付金及乗込費ニ充当ス
一、年齢 満十六才ヨリ三十才迄
一、身体壮健ニシテ親権者ノ承諾ヲ要ス。但シ養女籍ニ在ル者ハ実家ノ承諾ナキモ差支ナシ
一、前借金返済方法ハ年限完了ト同時ニ消滅ス
即チ年期中仮令病気休養スルトモ年期満了ト同時前借金ハ完済ス一、利息ハ年期中ナシ。途中廃棄ノ場合ハ残金ニ対シ月壱歩
一、違約金ハ一ヶ年内前借金ノ一割
一、年期途中廃棄ノ場合ハ日割計算トス
一、年期満了帰国ノ際ハ、帰還旅費ハ抱主負担トス
一、精算ハ稼高ノ一割ヲ本人所得トシ毎月支給ス
一、年期無事満了ノ場合ハ本人稼高ニ応ジ、応分ノ慰労金ヲ支給ス
一、衣類、寝具食料入浴料医薬費ハ抱主負担トス
と、このようにかなり厳密に慰安婦は軍により雇い主から「保護」されていました。
でも、これを書いてしまうと軍の性奴隷という印象から大きく変わってしまうから、長井さんは「タイトルだけ」しか書かなかったんだよね。
まあ、偉そうに書いているけど、この事実を見つけたのってエンコリの赤組の人だけど。
つまりだ、もう何年も前に間違いや印象操作を指摘されてる人なのだよ、この人は。
いくつか引用時に太字強調しただけで*1、細かく論評する気にはなれない。ああ、見えている世界観が根底から違うのだな、と思うばかりだ。
そしてその価値観は、「この事実を見つけたのってエンコリの赤組の人」や「もう何年も前に間違いや印象操作を指摘されてる」といった文章から、一個人ではなく近年も相応の広さで共有されていることもうかがえる。
さらに以前、別のエントリ*2において、慰安婦制度が存在した当時の価値観を示す資料を坂本真一氏から紹介してもらった。中野重治『古雑誌から』に引用された文章なのだが、上記コメントの価値観が、当時の価値観を受けついだものであるとうかがわせる内容だ。
紹介者が注意したように、衝撃的な内容だ。美辞麗句に彩られることで、価値観の断絶が際立って感じられる。
批判を承知でいえば、私は、どちらかというと人間は自身の性を売る権利があると考える立場だ。むろん現代社会における売買春を肯定することと同一ではないし、望まず売春婦へ追いやられた人々を社会から排除しない*3ため売春を合法化すべきという理路とも違う。人間は性を自己決定できるという考えに基づいて、いずれ全く自由な選択肢の一つとして性を売る権利が持てる社会にするべきという主張だ。だからこそ、上記ツイートに引用されている価値観は許しがたい。
つまらぬ性的放恣に遊ぶことに罪などない。淫売という評価を否定することで従軍慰安婦を守っているつもりになっている価値観こそが問題だ。
たしかに従軍慰安婦は手厚く「保護」され、主観では大切にあつかっていたのだろう。あたかも檻へ入れた家畜と同じように見なす価値観に基づいて。
もちろん、従軍慰安婦は獣ではないし、追いやった人々も酪農家ではない。私のたとえ話は畜産業に対して失礼だろう。牧畜は人を獣のようにあつかったりはしないのだから。
*1:強調しなかった部分が問題ないということではない。