法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『BLOOD-C』の評判に違和感

ニコニコ動画で見ていると、主に脚本が不評で、CLAMPで物語を担当している大川七瀬が原因あつかいされている。
しかし脚本の問題として指摘されている主人公が形だけ決意しては即座に折れるカタルシスのなさは、『BLOOD+』の展開を踏襲しているだけだ。つまり大川と連名で『BLOOD-C』全話の脚本を担当し、『BLOOD+』の監督とシリーズ構成をつとめた藤咲淳一に大きな原因があるのではないかと思う。
藤咲淳一の主な仕事を並べると、シリーズ構成として『BLOOD+』『RD 潜脳調査室』『獣の奏者エリン』『もしドラ』『APPLESEED XIII』を担当、『BLOOD+』『ルー=ガルー』を監督。『ルー=ガルー』は未見だが、少なくとも他はどれも全体の構成に問題をかかえた作品だ。物語面で評判の悪い近年のProduction I.G作品において、ほとんど全てのメインライターをつとめている。『RD 潜脳調査室』と『獣の奏者エリン』は比較的に良かったものの、前者は他の脚本家による単発話の印象が良かったし、後者は原作者がアニメーション監修として参加している。
BLOOD+』を懐かしみ比較して劣化したとするコメントを多く見るが、同様の展開でも4クールから1クールへ縮め、決意が折れること自体を謎のひとつにしただけでも、『BLOOD-C』は少し改善されている。5年以上もたてば記憶が美化されるということか、それとも自分が見て育った作品を基準としてしまうということか。


あと、ほとんどの戦闘で決着があっさりしているところは、『BLOOD+』よりも原典の中編映画『BLOOD THE LAST VAMPIRE』を思い出す。
最高のアニメーターをそろえながら、あえて実写ホラー映画のようにリアルで動作のにぶいアクションを見せたところが独特だったが、最後の敵に対してロングショットで切りつける姿を見せるだけという演出は、いささか首をかしげたものだ。


個人的な感想としては、序盤から主人公と舞台の奇妙さを強調し続けるのは、意図的か稚拙さか理解しにくく、失敗だったと思う。最初は普通に敵を撃退する一話完結で展開し続け、折り返し地点の第6話くらいから主人公の異常さに焦点をあてるべきだった。
そもそも『ラーゼフォン』等もそうだが、いずれ謎が解かれる期待ができる本格ミステリでもないのに、視点人物となる主人公の視点が信用できない叙述トリックは、よほど自然な描写ができなければ避けるべきだろう。