法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『バトルスピリッツ ブレイヴ』第47話 男たちの闇 アスクレピオーズ慟哭

……日曜朝から何てアニメを全国放映してるんだ。まさか前回で充分に描かれたと思っていたザジの仮面の意味について、こんな背景があったとは。
前半に自身の美しさを語りだしたザジは、ナルシスト系のキャラクターかと思わされた。自己の美しさを嫌悪する言い回しも、典型的な自己陶酔かと解釈した。後半に入って貧民窟の出身と語り始めた場面も、そう心を動かされることはなかった。……まさか部下の二人とともに「美しさ」を上流階級へ売って周囲へほどこした過去が語られるとは思わなかったよ。過去にあらゆる立場を騙してきただけに、心からの同志も側にいたことの重みも映える。知識を持たない子供の視聴者にはナルシストと解釈させ、知識を持っている視聴者には引くぐらいの衝撃を与える、二重構造の台詞回しもよくできている。
しかも、そんな重すぎる背景を聞いた後、ザジには破壊した後のビジョンがないと切り捨ててしまう主人公のゆるぎなさが半端ない。しかも怨嗟で動いたわりに破壊後のビジョンだけはあった異界王と比較してザジが批判され、より矮小なトリックスターに位置づけられてしまう。そんな異界王がバトル終了後にイメージ的に再登場し、父親か共犯者のように主人公へ語りかけたのも、矮小なまま終わった前作の補足として印象深い。


前回に反乱された対処については、不確定要素を排除したことで女王が表舞台へ戻って収束というシンプルさ。展開に説得力が特に低いわけでもないし、巨大な映像を投影して復活を高らかに宣言する映像のハッタリも良かったので、御都合主義という感じはない。自身の生存について、全ての魔族へ隠していたという女王の台詞も地味に細かい。バローネ達が情報隠蔽を疑われる危険性を先んじて防いでいる。


作画監督は菊池晃。ボリュームある髪型が特徴的。しかし今回の描線は太いだけで強弱があまりなかったから、濃厚な陰影のわりに単調な作画に感じられたことが残念。悪くはないのだが、もっと上を見たかった。
映像的には、ダブルブレイヴという圧倒的な能力でザジを倒す主人公が、金を基調とした姿から漆黒へ変わったところが、なかなか凶悪で良かったくらい。