法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『イーグル・アイ』

フジテレビ系列の土曜プレミアム放映版を視聴。117分という短い物語なので、おそらくノーカットに近いだろう。


国家機関が高度な監視社会を構築している世界で、なぜか監視の標的にされた個人が逃走劇をくりひろげる、そろそろ古典になったジャンルの娯楽活劇。
いかんせん、遠隔操作される機械が多彩すぎてルールの制約をひっくり返すゲーム的な楽しみがないとか、電話ごしに命じる女の正体が今どき暴走した巨大コンピュータかよとか、主人公を標的にせずとも他に安易な方法が無数にありそうだとか、つくりは大味でいて新味もない。
ちょっとばかり政治風刺も入っているが、結局のところ最終的な悪玉が巨大コンピュータなので、国家機関の問題はなしくずしに棚上げにされて終わってしまった。どう考えても巨大コンピュータを作って運用し、監視社会を構築した政府にも問題はあるはずだが、子供を危険にさらされた女性や、兄弟に先立たれた男性は、笑顔で結末をむかえる。いっそ終盤で倒れたまま主人公が死ぬか癒せぬ傷を負い、巨大コンピュータこそ廃棄されたものの秘密裏に監視社会は続けられるくらいの苦い結末でもあれば、社会問題が切断処理されず風刺性を保てただろうに。監視社会ジャンルとしては異様なほど風刺性が弱い。
特に特撮や演出が悪いわけでもないが、小刻みなアクションで場面転換して観客の興味をつなぐだけの、頭を使わない娯楽小品といったところ。