法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』恐怖のジャイ子カレー/上げ下げくりであとまわし

アニメオリジナル話と原作短編話の2本立て。
今回は脚本家こそ違えど、どちらも鈴木孝義コンテ演出で鈴木まりあ作画監督なので、映像に面白味がない。後半で、のび太ジャイアンについてくるよう指示し、傾斜した道路を下りて街へ溶け込んでいく姿をロングで描いたカットくらいかな。作画は全体を通して弱い。物語が率直に映像化されたことによる面白味はあったが……


Aパートはジャイ子がオリジナルカレーを皆にふるまう話。有名な「ジャイアンシチュー」に対して、オリジナルで続編を作ったといったところ。作中でジャイアンシチューについても言及される*1ジャイアンシチューで登場した秘密道具が再登場したかと思えば、賞味期限という展開は藤子F作品らしい。
ジャイ子カレーが美味しいという真相は予想できる範囲。ジャイアンが料理を作った時には布で口元を覆っていた上に最終的には逃げ出していたし、最後の最後で試食したジャイアンが倒れたジャイアンシチューと違ってジャイ子は試食しながら味を調えていく。別の回でジャイ子は普通に家庭料理をしていた記憶もある。普通に料理ができてもおかしくない要素は多々ある。今回単独で見ても、自作のエプロンを用意していたり、生活能力の高さや手先の器用さがうかがえる。
だいたい真っ黒なカレーって、不味そうと思えない。個人的には、本格派のカレーこそ焦げ茶色だったりしそうなイメージがあるくらい。調理開始時からして、様々な植物を石ですりつぶす場面など、普通にカレー粉を自作しているとしか見えなかったし。真相の説得力を高めているとはいえるが、そもそもどんでん返しとして成り立っていないのではないかと思った。
それでもって、どこからともなく現れたカレー評論家がジャイ子カレーを絶賛し、うまく逃げていたスネ夫ジャイ子カレーへ食指をのばすわけだが……ここはドラえもん達の絶賛を信じてスネ夫も食べようとするだけで良かったのでは。短編なのだし、その場限りのギャグで埋めず、あらかじめ配置した素材だけを使って勝負してほしい。
最後にジャイアンが勝手にカレーへ手をくわえてしまうオチはマル。うまく逃げたスネ夫だけが被害にあうという因果応報オチで綺麗に閉じた。ジャイアンシチューで使った蝉の抜け殻等を、先述した石ですりつぶし、カレーに加えて不味くしていく描写自体もいい。すりつぶされる蝉の抜け殻やイカの塩辛が比較的リアルに作画されていて、本当に不味そうだったでゲソ。


Bパートは全体的に原作通り。しずちゃんが犬を連れこむ説得力を増すために足跡をふいた等の説明が加えられていたり、先生が小学生に教えながら煙草を吸おうとする描写がジュースを買ってあげる描写に改変されたり、原作と異なる描写は納得がいくものばかり。
因果応報と見せかけてそうではない。超常的な機械が実在した場合を仮想し展開する物語は正しくSFだ。ただ、原作が絵としては地味な内容だったこともあり、単純に原作を映像へ移しただけの内容には不満も感じた。映像化したことでの新しい面白味がもっとほしかったところ。

*1:ちなみに、新生ドラえもんでのジャイアンシチューは、アニメ独自の構成で別の短編原作から連続する内容になっていた。今回の描写と矛盾している内容があったわけではないが。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080620/1214005695