法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

橋下徹弁護士、体をはって懲戒請求の無意味さを主張する

この短い記事の、さらに短い橋下弁護士のコメント一つにツッコミどころがいっぱい。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101119-OYT1T00552.htm

 弁護士の懲戒請求を呼びかけた橋下徹大阪府知事の発言を巡り、知事への懲戒請求大阪弁護士会に申し立てた樺島正法弁護士(68)(大阪弁護士会)が「殺すぞ」などと電話で脅迫された問題で、橋下知事は19日、府庁で報道陣に「(脅迫電話など)不法なことは避けてもらいたい」と述べた上で、「弁護士の態度を改めさせたいなら、懲戒請求をしてもらえばいい」との考えを語った。

 橋下知事が再び懲戒請求を呼びかけた形で、波紋を呼びそうだ。

 橋下知事は、タレント弁護士として活動していた2007年5月、山口県光市の母子殺害事件の弁護団に対する懲戒請求をテレビ番組で呼びかけ、今年9月、「弁護士としての品位に欠ける」などとして、大阪弁護士会から業務停止2か月の懲戒処分を受けた。

まず、正当な理由なく懲戒請求を行ったり呼びかけたりすることの加害性が訴えられた民事裁判において、橋下弁護士は負けている最中。脅迫電話が不法なことは当然として、懲戒請求なら合法というわけでは必ずしもない。懲戒請求はそれほど負担になる制度であり、最後の手段だ。感情的に弁護士の態度を問題視したいなら、まず弁護士会の窓口やメディアへ訴えるべき。
次に、橋下弁護士自身がその懲戒請求を扇動した問題で懲戒請求され、審査をへて業務停止命令がくだされ、業務停止が終わったばかり。懲戒請求を行うことで弁護士の態度が改められるというなら、橋下弁護士が他人へ懲戒請求を薦めるような発言はしなくなるはず。つまり橋下弁護士は体をはって矛盾を示しているわけだ。
何より、樺島正法弁護士の態度は改めさせるべきものかどうか。実際に懲戒請求扇動問題での懲戒請求はきちんと審査に通っており、橋下弁護士のそれと違って正当な事由があったと認められている。現在は無反省な橋下弁護士の様子を見て、重ねての懲戒請求を検討していたと記憶しているが、それが通るかどうかはさておいても改めさせるべき態度とは思いにくい。


ちなみに朝日記事はもう少しくわしく報じている。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201011190051.html

 橋下徹大阪府知事がテレビ番組での発言をめぐり大阪弁護士会から業務停止2カ月の懲戒処分を受けた問題で、懲戒請求の代表人を務めた樺島正法弁護士の事務所に、男の声で「殺してやる」などという脅迫電話が9月下旬以降、計4回かかっていたことが大阪府警などへの取材でわかった。樺島弁護士が脅迫などの疑いで府警天満署に被害を相談している。

 樺島弁護士や同署によると、電話は9月22日と25日、今月13日、18日のいずれも業務時間外にかかってきた。留守番電話に男の声で「知事も反省している」「寝ぼけたことを言うと承知しないぞ」「周りの人間をすべてたたき殺してやる」などのメッセージが残され、口調などから同一人物とみられるという。

 樺島弁護士は「懲戒請求を申し立てたころから、今回と同じと思われる匿名の男から抗議の電話を受けていた。次第に内容がエスカレートしている。卑劣な行為で許されない」と話している。

    ◇

 橋下知事は19日、報道陣に「脅迫はあってはならないこと」と話した。一方で「不平不満があれば、懲戒事由を調査のうえで、弁護士会に懲戒手続きをとってほしい」とも語った。

「知事も反省している」も何も、業務停止が解除された直後に「弁護士会は権利ばかりを主張する権利集団だ」などと主張していたんだけどね*1。そして今回報道の発言でさらに反省のなさが裏付けられた。
一方で今回の記事では「懲戒事由を調査のうえ」という文言も入っている。しかし「不平不満」が根本の動機では、やはり正当な懲戒請求にはなりえないだろう。