法華狼の日記

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橋下徹弁護士、懲戒請求を扇動した問題で逆転勝訴

二審で賠償額が減っていたので、予想はしていたが。
http://www.asahi.com/national/update/0715/TKY201107150427.html

 1999年の山口県光市の母子殺害事件をめぐり、被告の元少年(30)の弁護人らが、大阪府知事就任前の橋下徹弁護士の発言で名誉を傷つけられたなどとして損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷(竹内行夫裁判長)は15日、橋下氏の逆転勝訴とする判決を言い渡した。

 橋下氏の賠償責任を認めた一、二審判決を破棄し、弁護人らの請求を棄却した。ただし、弁護人の懲戒請求を呼びかけた発言については「慎重な配慮を欠いた軽率な行為で、不適切だった」と批判した。

 問題になったのは、2007年5月のテレビ番組「たかじんのそこまで言って委員会」での橋下氏の発言。裁判で殺意を認めていた元少年が、新たな弁護団がついた後に否認に転じた点について、「弁護士が中心になって主張を組み立てたとしか思えない」「許せないと思ったら、弁護士会懲戒請求をかけてもらいたい」などと批判した。

「慎重な配慮を欠いた軽率な行為で、不適切だった」ということを認めたことを、どこまで重くとらえるかが今後に問われるかな。とりあえず詳報と専門家による解説を待っておく。
ただ、比較的にくわしい読売新聞記事を読み比べると、かなり橋下側の主張にそっていると感じる。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110715-OYT1T00816.htm

 橋下徹大阪府知事にテレビ番組で懲戒請求を呼びかけられ、業務を妨害されたとして、山口県光市母子殺害事件弁護団の弁護士ら4人が橋下知事に計約1300万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が15日、最高裁第2小法廷であった。

 竹内行夫裁判長は「配慮に欠ける軽率な言動だったが、違法とまでは言えない」と述べ、橋下知事に計360万円の賠償を命じた2審・広島高裁判決を破棄し、原告の請求を棄却した。

 橋下知事は、知事就任前の2007年5月に出演したテレビ番組で、被告の元少年(30)が殺意などについて否認に転じたことを巡り、「弁護士が主張を組み立てたとしか考えられない」「許せないと思うなら懲戒請求を」と発言。その後、4人に対して計約2500件の懲戒請求が寄せられた。

 同小法廷は「橋下氏は懲戒請求を勧めただけで、多くの懲戒請求が行われたのは、発言に共感した視聴者が多かったためだ」などと指摘。また、懲戒請求の内容がほぼ同一だったため、原告らが所属する広島弁護士会が請求についての調査を一括して行ったことなどから、「原告らの業務に大きな支障が生じたとは言えない」とした。

 2審判決は「橋下氏の発言で、弁護団は心身の負担を伴う対応を余儀なくさせられた」として、不法行為の成立を認めていた。

 判決を受け、橋下知事は「きちんと判断していただき、ありがたい。最後に頼れるのは最高裁だとつくづく感じた」と話した。一方、原告代理人の島方時夫弁護士は「刑事弁護をする人はバッシングを受けても我慢しなければならないのか」と不満を述べた。

懲戒請求が調査を一括して行ったから負担にならなかったという主張は、橋下側の主張とほぼ同様。
しかし懲戒請求扇動の余波は大きかった。様々な説明会が開催されたり、インターネット上で光市母子殺害事件弁護団が資料公開や説明を行うはめになったり、実際に橋下弁護士も被害者遺族への謝罪を弁護団に求めたり、懲戒請求以外に多大な負担があったことを記憶している。裁判では扇動の適否が焦点だったため切り捨てられた論点とは思うが、原告にとってつらい判決だろうと思わざるをえない。


しかし逆転勝訴後の橋下弁護士の弁はなかなかふるっている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110715-OYT1T00903.htm

 山口県光市母子殺害事件を巡り、被告弁護団への懲戒請求をテレビ番組で呼びかけたことに対し、弁護士4人から損害賠償を求められた訴訟の上告審で逆転勝訴した大阪府橋下徹知事は15日、「きちんと判断していただき、非常にありがたい。表現の自由にかかわることであり、こういう問題になると最後に頼れるのは最高裁だとつくづく感じた」と述べた。

 さらに、「一般市民が弁護士に不服申し立てをするのは懲戒請求しかないので、国民には制度を正しく活用してもらいたい」と語った。

重大な裁判では地裁から最高裁にあがると国家権力におもねった判決が多く出る印象があるが、そうした個人的な感覚はさておく。
橋下弁護士は自身が懲戒請求にかけられて業務停止された時、どのような発言をしたのか記憶しているのだろうか。すでに弁護士業務を行っていなかったためか処分こそ受け入れつつも、「視野の狭い弁護士数人が勝手に判断した」「弁護士会の品位の基準と僕の基準は違う。北新地に行けば品位のない弁護士は山ほどいる。あいまいで不明確な品位を懲戒の基準にする弁護士会はどうかしている」と、おおやけに弁護士会を批判していたのだ。
橋下徹弁護士(業務停止中)に懲戒請求が通る - 法華狼の日記