法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

橋下徹弁護士まずは地裁で敗訴、しかし控訴の意向

http://www.asahi.com/national/update/1002/OSK200810020015.html

 橋下徹弁護士(現大阪府知事)のテレビ番組での発言で大量の懲戒請求を受け、業務を妨害されたとして、山口県光市の母子殺害事件差し戻し控訴審で被告の元少年(27)の弁護人を務めた弁護士4人が1人300万円ずつの損害賠償を求めた訴訟で、広島地裁は2日、1人につき200万円、計800万円の支払いを命じる判決を言い渡した。橋下氏の発言が大量の懲戒請求につながり、弁護士に多大な負担と精神的苦痛を与えたと認定した。

 判決によると、橋下氏は07年5月27日、民放の番組に出演し、元少年が差し戻し控訴審で、一、二審とは一転して殺意や強姦(ごうかん)目的を否認したことについて、弁護団がそうした主張を組み立てたと批判。「許せないって思うんだったら、弁護士会懲戒請求をかけてもらいたい」と発言した。今年1月までに4人に対し、それぞれ600件を超える懲戒請求があった。

 橋本良成裁判長は、橋下氏の「弁護団の主張が創作であり、懲戒に相当する」という趣旨の発言について根拠がなく、名誉棄損にあたると認定。「創作かどうかについて、弁護士であれば少なくとも速断を避けるべきだ」と述べた。

 さらに、橋下氏がテレビ番組で特定の弁護士に対する懲戒請求を呼びかけ、不必要な負担を負わせたことは、名誉棄損とは別の不法行為にあたると認定。「弁護人は被告に最善の弁護活動をする使命がある」などとして、橋下氏側の反論を退けた。

 そのうえで「発言が契機となって、これらの懲戒請求がなされた」と因果関係を認め、橋下氏の発言によって原告の弁護士に答弁書作成などの事務負担を生じさせたとして、業務を妨害されたとする原告側の主張を認めた。

 懲戒請求は一般市民もでき、弁護士会が懲戒に当たるかどうか判断する。日本弁護士連合会によると、今年9月末までに8千件以上の懲戒請求があったが、懲戒を決定した弁護士会はないという。

 光市母子事件の差し戻し控訴審では今年4月、広島高裁が元少年に死刑を言い渡した。元少年は上告している。

1200万円の求めに対し、800万円支払いを命じたということは、原告の訴えが相当に通ったと見ていいだろう。名誉毀損を認めた上、不必要な負担について別途認定していることも重要。
記事を見ていて気にかかるのは、「テレビ番組で」といった新聞社記事の他人事口調。確かに橋下弁護士が発言したのは『たかじんのそこまで言って委員会*1ばかりだったが、他のテレビ局や新聞紙も、必ずしも弁護の意味を周知徹底していたわけではない。橋下弁護士に与する論者を無批判に出していたこともある。
懲戒請求騒動で報道機関としてまっとうな仕事をした例は少なかったし、誤解に基づく弁護団批判は多くのメディアでなされていた。主要報道機関での例外は、安田好弘弁護士の主張を載せた東京新聞くらいだろう。
http://www.asahi.com/national/update/1002/OSK200810020032.html

 山口県光市の母子殺害事件をめぐり、橋下徹大阪府知事が知事就任前の07年5月、テレビで繰り広げた発言で2日、知事敗訴の判決が出た。

 橋下知事は「原告の皆さん、光市母子殺害事件弁護団の皆さん、大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と頭を下げた。「私の法令解釈、表現の自由に対する考え方が間違っていたとの判断を重く受け止めます。判決が不当とは思わないが、三審制ということもあり、一度、高裁にご意見をうかがいたい」と述べ、控訴の意向を示した。

 広島地裁の判決は、刑事弁護人の使命・職責について「有罪判決確定までは無罪と推定される被告の保護者として、基本的人権を守る役割を担う」ことが憲法上の要請だと強調。弁護士の懲戒をめぐっては「多数の人々から批判されることでそうした弁護人の活動が制限されたり、ましてや懲戒されるようなことがあってはならない」と述べた。こうした判断を踏まえて、弁護士である橋下氏の見解を「まったく失当」と厳しく戒めた。

 原告の一人で、元少年の差し戻し控訴審途中で弁護人を解任された今枝仁弁護士(広島弁護士会)は閉廷後に記者会見した。今枝弁護士は「裁判員制度の開始前に、報道で得た断片的な情報をもとに、十分な調査をせず弁護人を懲戒請求するのが違法であることが公的に確認された。画期的な判決だ」と話した。

 差し戻し控訴審では、一、二審とは一変した元少年の主張に沿った弁護方針が、一部から強い批判を受けた。今枝弁護士は「被告の利益のためになされる刑事弁護の意義が社会に広く、十分に理解されなければならない」と強調した。

 原告弁護士の代理人を務めた弁護士らも午前11時前から記者会見した。児玉浩生弁護士は「世間から、刑事弁護について感情的な批判が続いていた。それを後押しする橋下氏の発言が間違っていたことを判決が端的に示しており、満足している」と語った。

裁判中は自説が通るとうそぶき、負けたら頭を下げつつも控訴する姿は、いかにも政治家的だな、と思う。
そもそも「三審制」だから控訴するという論理は、橋下弁護士だけは使ってはいけない。制度を濫用して裁判を戦うことは、原告に無用な負担をかけることではなかったのか。控訴することをちらつかせた時点で、光市母子殺害事件弁護団の活動ほとんどに対して、批判することができなくなる。判決が不当と思わないなら素直に受け入れればいいだけだろうに。


まだ地裁の段階とはいえ、橋下弁護士の主張が批判され、弁護活動への誤解が解ける一助になればいいのだが……
以前から批判しているちくわ氏の、複数報道に対するコメントはこうだ*2

 判決を重く受け止めつつも、控訴する気満々なのは結構だけど、正直これは負け続けで終わるだろうなあ。市井目線では、間違いなく橋下の勝ちなんだけど。

( ´Д`)「これで橋下が勝ってもーたら、まともやない弁護士連中が、常に戦々恐々とせなあかんよーになってまうしな。そないなったら弁護士だけの話やのーて、法曹界全体に疑念疑惑の目が向くよーになってまうし」

 もう、そうなっていると思うけどな。だからこそ、懲戒請求を出した人が空前絶後の2400件にものぼったワケで。
 つか、2400件も懲戒請求が来たのに、取り下げたのが5通しかなかったって、どーよ。

( ´Д`)「読売新聞であったな。ちぅか、それを誇らしく語っとるっちゅーのもまた、的外れな話やね」

 普通、それだけ批判が来たら、たかが数人に励まされたところで、ヘコむというか自分自身がおかしいんじゃないかって思うよな(笑)。
 とまれ、懲戒請求に至る手順に、橋下の言動が深く関与しているのだとしても、そこに違法性があるとして、それを撤回した人間が数人いようとも、撤回しなかった人間のが圧倒的に多いという事実は、それだけ多くの人間があの弁護団に異常性を感じたって事だと思うんだが、日弁連は正式な手続きを踏んで送られた2400通の懲戒請求すら受け付けないって事だよな。弁護士やりたい放題ですよ。ふはははは。

まったく成長していない。「異常性を感じた」という根拠からは、「許せない」と思っただけで懲戒請求を出せるという橋下弁護士発言に騙されたままと推測できる。
念のために解説しておくと、懲戒請求自体は日弁連も受け取った。精査して、通らない主張だと結論づけたのだ。差し戻し審以降から弁護団へ入った弁護士に対して、最高裁欠席を懲戒事由にするような懲戒請求ばかりでは退けられるのが当たり前。テンプレートにサインする安易な懲戒請求ばかりだったから、懲戒事由も事実誤認だらけだった。請求者の存在が確認できず、偽名と思われる例すらあった。実際に通る懲戒請求がありえたとしても*3、それは現在の裁判で争われていることではない。
形式的に手続きを踏んでいても、事実誤認だらけの訴えが通らないことは市井目線でも理解できるだろう。ちくわ氏は、勝手に市井を代表しないように。誤認だらけの請求が来ていることを無視し、架空の懲戒請求が通る可能性を論じてもしかたない。
そもそも、ちくわ氏の考える「正式な手続きを踏んだ2400通」とは、何なのだろうか。「正式な手続き」とは何か以前に、「懲戒請求を出した人が空前絶後の2400件にものぼった」という文章から見て、一人で複数の懲戒請求を送っていることすら計算できていない。人数よりはるか多くの請求がなされたことも、原告が被害をこうむった一因だ。

*1:そういえば番組名を出した報道が少ない。

*2:http://www.tikuwa.com/index2.html成年向けイラストサイト注意。2008年10月2日の日記。

*3:最高裁欠席した弁護人のみに対する最高裁欠席を懲戒事由とした訴えは、少なくとも名誉毀損にはならない可能性が高かった。最高裁欠席に斟酌すべき事情があり、すでに懲戒事由には当たらないという判断がくだされている現状で出すなら、また別の話になるが。