法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

橋下徹弁護士、たしなめられる

そろそろ結審する予定の懲戒請求扇動裁判控訴審において先ごろ、以下のような一幕があったという。
http://www.asahi.com/national/update/0216/OSK200902160123.html

橋下さん、多忙はわかるが…裁判長苦言 事件発言控訴審
2009年2月16日22時7分


 山口県光市の母子殺害事件の被告弁護団への懲戒請求をテレビ番組で呼びかけた橋下徹弁護士(現大阪府知事)が、被告弁護人を務めた弁護士4人へ1人当たり200万円の支払いを命じられた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が16日、広島高裁(広田聡裁判長)であった。広田裁判長は、橋下氏側が控訴理由書の提出期限を過ぎたうえにこの日までに3通に分けて提出し、さらに4通目があると予告したことについて、「多忙なのはわかるが、(橋下氏は)代理人を立てているのだから提出は可能だったはずだ」と苦言を呈した。


 民事訴訟規則で控訴理由書の提出期限は控訴から50日以内と定められている。橋下氏の本来の期限は昨年11月27日だったが、橋下氏側は12月12日までの延長を申請し、1通目を同日提出。2通目は今年1月6日、3通目は第1回口頭弁論のこの日に出した。(鬼原民幸)

提出期限を守っていないことはさておいても、一審とほぼ同内容の主張をするだけで4回に別けるとは、まず明らかな遅延行為といえるだろう。もちろん、他の場合ならばそれだけで強く批判するつもりはない。
だが橋下弁護士は、光市母子殺害事件裁判に対し、弁護団が遅延させていると思い込んで、口汚なく批判していた。実際には弁護団が遅延行為をはたらいていなかったことを知る機会があった後でさえ、批判を撤回し謝罪することはなかった。裁判が遅れることを被害者へ謝罪するべきという主張へ、姑息な軌道修正をはかっただけだった。
そして、懲戒請求扇動に対する訴訟が起こされると、被害を受けた人々へ謝罪することなく、弁護士に対して誠意を見せる必要はないと開き直った。この時点で口先だけの人間と明らかになったわけだが、なお橋下弁護士を行動力ある存在と主張する人々が存在するのは実に不思議なことである。
さて、弁護士に対して誠意を見せる必要がないという橋下主張を受け入れるとしても、裁判所からも遅延行為を指摘された今回、謝罪するなどして誠意を見せる努力は必要になったはずだ。もちろん、橋下弁護士に行動力がないことは痛感しているつもりなので、全く期待はしていないが。


ついでに、あくまで代理人である光市母子殺害事件弁護団と異なり、橋下弁護士は直接の加害者だ。それでいて、答弁書を出すなどして、自ら懲戒請求扇動裁判へ関わっている。控訴を決めたことも橋下弁護士自身の責任だ*1
加害行為の責が問われることは当然として、訴訟指揮のまずさも批判の対象となりうるだろう。


なお、それぞれの有利不利に関係なく、原告被告が態度をとがめられることは多い。とがめられたことだけでは判決を推測できない。
しかし、報道量が激減しているので不明瞭な部分も多いが、橋下知事控訴審でも一審と同様の主張しかできていないことは確実なようだ。今回の一幕は裁判の進行中ということもあり、裁判官に悪い心証を与えていることがうかがわれる。一審以上に厳しく橋下弁護士の加害行為が認められる可能性もある。
いずれにしろ、妥当な判決が出ることを望みたい。

*1:安田弁護士が欠席せざるをえない状況で弁護人となったのは、前任者が降りようとしていたからという事情がある。それにしても、安田弁護士の「多忙」を言及しなかった最高裁判所と比べ、今回の裁判長は優しいものだ。