法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『名探偵コナン 漆黒の追跡者』

TVで視聴。13作目の映画ということで黒の組織との全面対決……になるかと思えば、基本は2時間ドラマレベルの連続殺人事件。たまたま被害者の中に黒の組織関係者がいたため、事件へ関わってきただけ。かつてTVアニメで登場した数々の刑事や、黒の組織メンバー複数が登場するが、ほとんどが顔見せで終わっている。
しかもメインキャラクターの声優として歌手のDAIGOが使われているため、クライマックスシーンがなかなかに耳障りな事態となっている。劇中イベントの歌手として登場させれば、それで良かっただろうに。
連続殺人事件自体、犯人の残したメッセージを読み解いていく展開だから、推理の楽しみにきわめてとぼしい。せめて犯人の指摘に緻密な推理が使われていたならともかく、コナンが指摘した真犯人の根拠が、几帳面さという単なる心理的傾向の観察だからなあ……


以下は、真相にやや言及した話。子供向けミステリとして致命的といっていい瑕疵だと思える部分だ。
まず、火事から避難する時にエレベータが使用されたことが犯行動機へ深く関わってくる展開がおかしい。子供も見る作品なのだから、本来なら非常階段等を使うように注意……とかいう問題ではなくて、そういう普通ならありえない行動を8人もの大人がとった出来事なんて、事件の原因として不自然すぎるだろう。偽の解決までなら、8人のほとんどが利己的な人間だったのだろうというフォローもできる。しかし真相が8人全員それなりに善良な人々だったというなら、エレベータのゆずりあいを賞賛するより階段を使うよう説教しろよ、と突っ込みたくなる。しかも、ゆずりあい真相そのものは花束エピソードや、シリーズの作風から簡単に予想できてしまう。
実際にはエレベータを使った避難方法というものもあるのだが、レアケースであることを注意せず推理に組み込んでいては、ミステリとして話にならない。階段や通路が崩落してエレベータしか使えなかったとか、エレベータ避難を前提とした超高層建築だったとか、伏線を張る余地もあったはずだ。


連続殺人が終結して黒の組織が出張った途端、下に警察が集まってきている状況で戦闘ヘリに乗ったスナイパーが暗殺した上、誰かに見られたからと機体に設置された機関砲でタワーを攻撃するとか、秘密組織と思えない傍若無人ぶりもありえなさすぎる。
せめて狙撃に使うヘリは民生品を使って偽装するべきだろうし、タワーへの攻撃も日本国内でも密輸されていそうな火器で攻撃するくらいに描写を抑えるべきだ。
そもそも2時間ドラマレベルの個人が行った連続殺人事件と、結末の大立ち回りが接合されていないところが問題だが。