法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

だから星条旗は燃やされた

久間知毅氏が、相手の気づきにくいところで批判することは自由だ。しかし、つぶやきに気づかなければ、それこそ何カ月も応答が遅れるよ。
久間知毅@C95-2日目西む-02a on Twitter: "とりあえず、先日お教えいただいた、法華狼氏による例の件は、特に何も返す必要はないと判断。別の方への問題のすり替えに使ってるだけだし、その方への言いがかりも事実誤認や斜め上の解釈にまみれており、「お前は何を言っているんだ(AA略」、という状態ですし。"

とりあえず、先日お教えいただいた、法華狼氏による例の件は、特に何も返す必要はないと判断。別の方への問題のすり替えに使ってるだけだし、その方への言いがかりも事実誤認や斜め上の解釈にまみれており、「お前は何を言っているんだ(AA略」、という状態ですし。
3:02 AM Apr 9th

twitterは批判の根拠を同時に出しにくいツールだ、ということは理解しているつもり。しかし久間知毅氏の批判に具体性が欠けているので私としてはどうしようもない。そもそも第三者への言及を理由にして自分が返す必要がないと宣言することは、是々非々な態度とはいえないだろう。
くわえて、続いてtwitterで応答されている内容の連続を見て、驚いてしまった。
久間知毅@C95-2日目西む-02a on Twitter: "右翼でも左翼でもなく是々非々で考えろ、って言ったら自称中立呼ばわり、か。私は前から保守だって言ってるのに、何が「自称」なんだろうね。"*1

右翼でも左翼でもなく是々非々で考えろ、って言ったら自称中立呼ばわり、か。私は前から保守だって言ってるのに、何が「自称」なんだろうね。
6:25 AM Apr 11th

その話、ものすごく手間をかけて説明したのだが。
自称中立がらみのコメントを保存 - 法華狼の日記

次に、大辞泉から「中立」という言葉を引いてください。

念のため、実際に引いてみればわかると思いますが、ここでの「対立」や「思想」は、右翼や左翼、保守や革新、リベラルやコミュニズムといった限定がありません。

おそらくは「中立」という言葉から右翼左翼という対立構図しか発想できなかったゆえの誤謬です。

是々非々を標榜する時に右翼や左翼という対立構図しか想定できないのは、冷戦思考の無自覚な継承なのだろうな。
そもそも、下記のようなつぶやきをRT*2として引用することの、どこが是々非々というのだろうか。
きぐつ on Twitter: "在特が大手を振る以前はあの連中が行政各部にゴネて、在特と逆ベクトルなだけのヘイトスピーチを撒き散らしてたのに。いけしゃあしゃあと。 RT: @miraclemiracle: http://bit.ly/95C4E3 人間のクズが人間のクズを人間のクズと罵るなんというカオス"

RT @ryankigz: 在特が大手を振る以前はあの連中が行政各部にゴネて、在特と逆ベクトルなだけのヘイトスピーチを撒き散らしてたのに。いけしゃあしゃあと。 RT: @miraclemiracle: http://bit.ly/95C4E3 人間のクズが人間のクズを人間 ...
5:11 AM Apr 9th

「行政各部にゴネて」ということと、戸田ひさよし個人が集団から暴行されたことを同列に扱う態度に目を疑った。そもそもヘイトスピーチを嫌うなら「人間のクズ」という表現も批判するべきではないかと思うが、仲間内には是々非々な態度を取れないのだろうか。それとも「敵」には何を言ってもやってもいいと思っているのだろうか*3


久間知毅氏がRTで引用しているつぶやきは、他にも問題が多々ある。
きぐつ on Twitter: "そう、あれで「『どっちもどっち』って言うな」っていうんだから拷問にもほどがありますw RT: @natamamenoki: それ以前に「○○もやってるから自分もやっていい」という理屈は通らないんですけどね>ホッケ"

RT @ryankigz: そう、あれで「『どっちもどっち』って言うな」っていうんだから拷問にもほどがありますw RT: @natamamenoki: それ以前に「○○もやってるから自分もやっていい」という理屈は通らないんですけどね>ホッケ
7:06 AM Apr 9th

natamamenoki氏のつぶやきは全く話を読めていない。様々な歴史に残る国旗毀損運動を知ったMukke氏が「下品ではあるが容認する」という主張へ変えたことを、私は言及している。あくまでMukke氏が使った理屈に乗っているのだ。
また、ryankigz氏のつぶやきだが、「どっちもどっち」が批判されるのは、対立する両者を批判してはならないからではない。逆に、両方への批判の手を弱めることに繋がるからこそ、「どっちもどっち」という態度が批判されるのだ。今回の話題でいえば、id:plummet氏が「追う気削げまくり」と明言したことを指す。つまり「どっちもどっち」という態度ですませるのではなく、「どっちもどっちも」であるべきということだ。


きぐつ on Twitter: "しかし、法華狼がいう「星条旗燃やして抗議する米国反体制運動があるから日の丸にうんこでもいいんだもん!」ていつの話だ。ベトナム反戦までは流行ったかもしれんが、今じゃやらないって。"*4

RT @ryankigz: しかし、法華狼がいう「星条旗燃やして抗議する米国反体制運動があるから日の丸にうんこでもいいんだもん!」ていつの話だ。ベトナム反戦までは流行ったかもしれんが、今じゃやらないって。
7:06 AM Apr 9th

現在に政治運動の手法として流行っているという話をしたつもりは一切ない。おそらく、ryankigz氏が指していると思うコメントが下記なのだが……
http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20100210/1265808406*5

hokke-ookami 2010/04/07 07:36

そしてご存知のように、少なくとも北米において星条旗は焼かれ、それを司法は積極的に認めています。星条旗が焼かれているのは星条旗反対デモとは限らず、ベトナム反戦デモ等で行われていた表現です。ちなみに、あえて逆に掲揚する商業娯楽映画も作られています(複数映画作品のネタバレになるので、リンク先は注意してください)。
http://newsweekjapan.jp/stories/movie/2010/03/post-1075.php?page=2
私自身の心情をいえば、この北米の自由さを知った時、逆に反政府デモや反権力デモでよく星条旗がひるがえっている心情が理解できた気がしました。

むしろ、星条旗自身が星条旗を燃やされる自由を認めているゆえに、反政府運動からも星条旗が愛されているのではないか、という主張をしていたのだ。つまり話が全く逆である。


ちなみにNY在住というジャーナリスト北丸雄二氏が、日章旗が改変されて民主党旗に用いられた時の産経新聞を批判していたことがある。
誤報批判というだけでなく、星条旗が燃やされる歴史についてもまとまっているので、引用させてもらう。
隔数日刊─Daily Bullshit: 貧すれば鈍する*6

中国やカナダ、ドイツ、イタリア、米国も国旗への冒涜(ぼうとく)や侮辱、損壊などに処罰規定を設けている。

米国では、この処罰規定は否定されています。
ベトナム反戦運動とか、いわゆる「確信犯」としての星条旗焼き捨て事件なんかが続発した歴史を持つ国です。1989年に連邦最高裁は次のように言いました。

「われわれは、国旗への冒瀆行為を罰することによって国旗を聖化することはしない。これを罰することは、この国旗の重要な象徴が表するところの自由を損なうことになる」

つまりね、アメリカの国旗が象徴するものはなによりも「自由」ということなのだ。だから、たとえその国旗を別の象徴(例えばアメリカ帝国主義の象徴とか)として焼き捨てるにしても、本来の象徴として国旗の中にある「自由」が、それを許すのだ、ということです。で、国旗を冒瀆する行為を処罰することは憲法違反だというの。すげえ。ねえ、かっこよくね?

これに対して連邦議会の保守勢力はやっきになって最高裁判決を法律で覆そうとする。で国旗冒瀆処罰法もまた出したりするけど、90年にはまたそれを憲法修正1条に違反するとした。2006年のブッシュ政権の時にも6月にまた憲法修正案で国旗冒瀆を許すまじとしようとしたけれど、これもまた上院で賛成が1票届かずに否決されたという経緯もあります。

ベトナム戦争終結したのは1970年代。つまり連邦最高裁が判決を出したのは10年以上後のこと。
さらに2006年にブッシュ大統領憲法修正案を通そうとした動きは、日本でも報じられていたが、1票差とはいえ否決されている。つまり、星条旗を燃やす自由は、ほんの数年前も重ねて再確認されたわけだ。


政治運動の場から国旗が排除されるならば、儀式での空気のごとき強制と、「愛国者」の運動でのみ日の丸がひるがえることだろう。そのような光景は誰に求められているのだろうか。
よく私はアメリカの正義というものを眉唾と思う。しかし、極まれに建前の自由を現実で貫いて見せた時、素直に感嘆する気持ちもわいてくる。孫悟空をもてあそぶ釈迦の掌に似た、現実の悲劇を切断処理しかねない余裕にすぎないかもしれない。だが、政治運動の表現として堂々と許しているということ自体は紛れもない現実だ。
国旗もまた、一つの表現だろう。批判の自由を許してこそ、表現の自由が獲得されるのではなかったか。

*1:念のため、私への直接返答ではない可能性もある。しかし私が説明したことを読んでおきながら理解していないことがよくわかるので、批判させてもらう。

*2:twitterで引用文を第三者へ拡散したい時に用いる書式らしいが、利用したことがないので文脈の解釈が間違っている可能性はある。

*3:http://b.hatena.ne.jp/entry/b.hatena.ne.jp/entry/blog.goo.ne.jp/kurokuragawa/e/42e236c59464f7b16b466b89ab25e6a9でryankigz氏が「 はてな, ヲチ 皮肉のつもりなら相手の「誤用」にのっかった侮蔑語を投げ返してもいいのかよ、って話をしたら「ゲスい」と返すと。ほんとに「敵」には何言ってもやってもいいって思ってるんだな。 2010/04/11」とコメントしたことを受けた表現。

*4:http://twitter.com/ryankigz/status/11879107954の引用。前後の流れを見る限り、肯定的に引用していると見ていいだろう。

*5:ネタバレ注意をしているためリンク先を読まなかったのかもしれないが、言及している商業娯楽映画は2007年に公開された作品だ。

*6:引用方法を引用枠へ変更。踏み絵の比喩は表現を受け取る側の「知性」に期待しすぎていると思えるが、国旗もまた表現であるという視点は重要だろう。