法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』豪華!スネ夫のビンボーバースデー

スネ夫の誕生日を記念してのアニメオリジナル中編。コンテは安藤敏彦。
誕生日パーティーの席上でプレゼントをもらう時、ついついスネ夫は自慢してしまい、皆を帰らせてしまった。そのためスネ夫は一人で誕生日を祝う羽目になる。反省したスネ夫は自らを貧乏にしてくれとドラえもんに依頼する……


前半までの展開は、原作のジャイアン誕生日エピソード「ハッピーバースーディ・ジャイアン*1に似ている。
ジャイアンは皆を誕生日パーティーへ呼びつけるが、いかにも不満げな祝われ方をしたため、怒ってパーティーを解散してしまう。そして皆が心から誕生日を祝ってくれないことを悲しみ、反省しようとする。そしてドラえもんから秘密道具を借り、自らの乱暴な性格を直そうとする。
原作の中でも印象深い感動的な話で、秘密道具に頼るべきではないという教訓も入りつつ、ジャイアンがすぐにも暴発しそうな不安を残すオチが笑えた。今回のスネ夫も、同様の展開となるかと思っていたのだが……


後半、貧乏になった骨川家が没落生活に苦しむかと思えば、さにあらず。余裕ある態度で環境に適応し、裏山の洞穴で先史時代のような生活をしながら楽しく暮らす。環境に配慮した生活で美食を愉しみ、新たに開かれた誕生日パーティーは金持ちの時と同じような展開をたどる……
学校の裏山は公共の土地かもしれないし、畑を作るのもいいと思うが、いくらなんでも牧場を作るのは現実味がなさすぎる。服装が古着などではなく、原始人をイメージしたようなものであることも違和感が大きい。何より、洞穴を即座に住みやすく改造するなんて、力仕事が得意なわけでもない貧乏な親子には無理だろう。
細かいところで現実的な制約を意識しているところが『ドラえもん』の魅力と感じているので*2、いくらギャグ展開といっても見ていて引っかかりを覚えた。秘密道具という大きなフィクションを見せるために、他の嘘は必要最小限にしてほしかったところ。
そもそも先史時代をイメージするなら、現在を舞台として貧乏にするのではなく、タイムマシンで先史時代に移住する展開にすれば、ずっと自然な内容になったと思う。


展開の意外性はあったし、ある意味ではスネ夫の性格を掘り下げていたし、個人の性格と社会階級を直結させる感覚への皮肉とも深読みできる物語だったが、語り口が好みに合わなかった。

*1:単行本第23巻に収録。

*2:たとえば大長編の『のび太の日本誕生』では、家出したのび太が空き地に住もうとしたら、土地の持ち主から追い出される描写がある。