法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』クリスマスSP 聖夜ののび太クロース/マッチ売りのドラミ

中編「聖夜ののび太クロース」と、掌編「マッチ売りのドラミ」。途中で映画の長尺版予告もある、クリスマススペシャル。
中編と掌編は両方とも水野宗徳脚本。クリスマスを題材にハッピーエンドを目指しながらも、正反対なトーンで物語られていることが面白い。


毎年のように勉強本ばかり贈られたため、のび太はクリスマスプレゼントに期待できなくなった。サンタの格好でセールをしている玩具屋に対してまで、クールに対応するほどの落ち込み具合。そこでドラえもんが秘密道具「サンタメール」を出して、のび太は希望していたクリスマスプレゼントをサンタから受け取る。その幸福をわけあたえようと、のび太は幼い子供達にサンタメールを与える。しかし、サンタメールで商品を得るには、高額の切手を貼る必要があった……
「聖夜ののび太クロース」は「サンタメール」が原作。ほとんど展開は変わらないが、細部の描写で伏線を足しつつ、結末で親子愛を入れている。サンタの正体はしょせん親という原作のクールな視点と、サンタは嘘でも奇跡を起こせるというアニメのホットな視点、その違いが面白い。
まず、デパートの商品をコピーしてきたという問題ありげな原作描写を、玩具屋が廃棄しようとしていた商品を貰うという描写へ改変。冒頭で近所の玩具屋を配置した伏線が光る。
のび太の罪悪感を増すため、サンタメールを受け取った兄妹の描写を足し、のび太が物質以外のものを贈る活躍場面を作ったのもいい。玩具屋と同じく、母親の映像的な伏線も見事。
ただ、居酒屋を一人で切り盛りしている母親が、いくらサンタが登場する異常事態とはいえ、そしてのび太の熱意に押されたとはいえ、客をサンタに任せる決断が早すぎるとは感じた。熱さを薄めず物語を一気に進行させたいなら、客だったパパ達が母親の背中を押すというような描写があっても良かったと思う。


作中でドラえもん達が『マッチ売りの少女』を撮影しているメタアニメ。主演のドラミが勝手にハッピーエンドを目指し、劇を無茶苦茶にしていく……
「マッチ売りのドラミ」は、リニューアル前のアニメでも似たような内容を見た記憶があるが、気のせいかな。短い内容なので雑な部分に突っ込みを思いつく間もなく、テンポ良いギャグで笑えて、後味も悪くない。
あえてクリスマススペシャルの最後にもってきて、感動を台無しにしてしまうところが逆に良かった。感動だけだと、逆に疲れるしあざとく感じてしまうものだ。