法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『獣の奏者エリン』第43話 獣ノ医術師

前回の次回予告で語られた通りの展開。何らひねりが無かったのが、逆にびっくり。
技量不足で王獣を興奮させ、あわてて制御しようとして失敗、そのまま流血沙汰へ発展すること自体は、さほど違和感ある展開ではない。同じような事故は現実にも見られること。
しかし、教導師ほどの立場になったのに、自身の信念に基づいて人の命を危機にさらしたのは、反射的行動とはいえ、まずさを感じた。いや、エリンの信念が感情移入できるものだったらいいのだが、「音無し笛」を使えば王獣と心を通わせられなくなるというエリンの考えは、あくまで推測にすぎない要素が残っている。


もちろん、今回でエリンは最終的に音無し笛を使用するし、指を失うほどの怪我を負う。怪我をさせた者達に謝罪し、報奨金を慰謝のため渡しもした。明らかにエリンの甘さを自己批判させる展開ではある。
しかし、今回がシリーズの谷ということを理解しても、もともとエリンには感情移入しにくいところがあるのだから、もっと経過をていねいに描写してほしかった。


たとえば、王獣を連行しに来た者達は、望んで危険な仕事に来たわけではなく、しかたなく命令で来たとすれば、どうだったろうか。
物語ではわかりやすくエリンと敵対しているが、逆にエリンと同情しあう関係となっていれば、つい反射的に音無し笛を使わないよう願ってしまうのも自然となる。彼らが怪我することでエリンが受ける衝撃も増し、自身を批判する強いきっかけとして描けるだろう。あらかじめ王獣の専門家ではないと描写しておけば、扱いに失敗する御都合主義も軽減する。