法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』のび太は世界にただ一匹

ワンアイデアだった原作を30分間に引き伸ばすためか、展開や演出の誇張が目立つ。
誇張を抑えて*1イデアの異様さを浮き立たせる原作と、動きのトリッキーさや画面全体を使ったパロディ*2を多用するアニメという差違は以前からだが、今回は全般的に雰囲気が異なる。
同じ引き伸ばすにしても、ここしばらく前半か後半のどちらかは原作通りの展開をしていたものだが……


まず、前半はあまり感心しない。保護動物というのは必ずしも可愛いという評価と直結しないのだから、原作のように頭の悪さや間抜けさが個性として珍しがられて価値を見出される描写が正しいはず。女性達に追いかけまわされる描写を見て、保護動物をタレントか何かと勘違いしているのではないかと感じた。
後半はさらに原作から逸脱していく。しかし保護動物が保護されて以降という、原作では描写されなかった部分が補完され、「保護」されている動物の視点がじっくり楽しめた。特に、保護対象動物の日常を人工的に再現して保護する現実にならい、実物大の野比家を再現して透明の壁から無数の観客が眺めるという描写の視覚的インパクが抜群。前衛舞台劇のような、メタフィクションのような、そういう悪魔的なブラックユーモアを映像から感じた。

*1:それだけに、キャラクターのデフォルメされた表情が印象深い。

*2:ネーミングやセリフのパロディは原作にも多い。